アルツハイマー征服

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朝の経済ニュースを見ていたら本書に登場するエーザイを含めた大手製薬会社株の特集回だった。コロナウイルス対策により、大手製薬企業株は手堅い動きが見込まれると述べながらも最後に記者が言った言葉が印象的だった。この業界はあくまでもハイリスクハイリターン、そのことを忘れないように。

 

創薬についてよく知らないので、この本を読んでここまでハイリスクハイリターンのものだと知って衝撃的だった。もはや博打のそれではないか。よくこれで商売が成り立つものだ。

 

しかし一発当たれば他の業界とはまた一段も二段も違う儲け。そしてこんな仕事に血道をあげる企業や研究者がいるから救われる可能性のある人たちがいる。なんともすごい世の中のしくみだ。

 

長い間認知症には直接的な治療薬がなかった。アルツハイマー病以外の認知症にアデュカヌマブは使えないようだが、認知症のすべてが一度発症したら打つ手がなかったこれまでを考えれば隔世の感がある。

 

とはいえ、アルツハイマー病だったとしてもアデュカヌマブは初期の患者が対象で、しかもひと月100万円とかいう高額な費用がかかるようなので現実問題としてはなかなか厳しそうである。

 

この本では遺伝子研究に基づいた創薬の経過が語られる。ここ10年くらいの遺伝子治療の発展には目を見張るばかりである。しかし遺伝子研究の発展は今までは人類が知ることのなかった新たな扉を開いてしまう。高い確率で発病する先天性の病気についてあらかじめ明確にしてしまうのだ。

 

自らも遺伝で引き継いだ疾患が高い確率で子どもに遺伝する。そのことをあらかじめ知っていたら生きることにどう影響するのか。本書には出生前診断について語られる章があるが余人が軽々に口出ししていいのか、人間はどこまでならしても良いのかと考え込んでしまう。

 

現時点までの認知症研究、あるいは遺伝子研究として非常に興味深いものだった。ノンフィクションの本を買うというのは時勢を切り取って保存しておく意味があると思っている。これは買う本にしよう。

 

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