ねこのばば

  某グルメレポーター的に言えば、この物語は不思議なお話の宝石箱なのである。妖が人を、人が妖を、人が人を、妖が妖を大切にする気持ちが宝物のように詰まっている。

  しゃばけシリーズ3作目。薬種問屋、長崎屋の一人息子の一太郎は身体が弱く、父母や家に住み着く妖たちに甘々に甘やかされる日々。周囲で起こるさまざま事件を妖たちの力を借りて解決する。よく考えると、ほとんどの事件は人が起こしている。げに恐ろしきは人間なりと。

  本作では一太郎の兄やで長崎屋の手代の一人、犬神である佐吉の過去も描かれる。犬神だけに一度主人と決めた相手には無償の愛情を注ぐのは昔からだったのか。なかなか切ない悲しい物語なのである。なるほど、そういうわけで一太郎への過保護が度を越しているのね。

  本作で初めて登場する広徳寺の寛朝御坊は悪そうなオトコでなかなか魅力的なキャラクター。女性にモテそうだけど、モテちゃダメなのね。この人はそのうちまた出てくるかな。

  一太郎の幼なじみで菓子司三春屋の跡取りにして菓子作りがうまくない栄吉の妹のお春には縁談が。縁談相手に不安を抱いた一太郎は身分を偽り相手のことを探ることにするが、それをきっかけにまた危険に巻き込まれて。

  人は間違える。妖も失敗する。悔やんでも、思い惑うことがあっても、それでも今度こそはと懸命に生きる姿にホッとするのである。基本的に明るいし、前向きだし、安心して読めるシリーズ。鳴家は引きつづき可愛いし❤️ヘビーな本を読んだ後、次に何読もうか迷った時に読むと、いったんリセットされていい感じなのです。

 

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