メメントモリ・ジャーニー

人生は倦んで退屈して過ごすには長すぎるが、したいことをすべてするには短すぎる。どこかで聞いたような文句だが、この本を読んでいるとそんなことを思う。

 

非常に興味深いことばかりして、大変人生を楽しんでいるように見える女性である。おそらく少し歳下であろう彼女。友人にいたら「アンタ今度は何して遊んでるの?」とワクワクして聞きたくなるだろう。

 

メレ山メレ子さんは旅ブログで青森のイカ焼き屋で飼われていた「わさお」を紹介して日本一有名な秋田犬にしたり、「バッタをを倒しにアフリカへ」で有名な前野ウルド浩太郎氏も参加した昆虫研究者やアーティストが集う新感覚昆虫イベント「昆虫大学」の企画・運営を手がけたりしている。

 

平日は会社員をするかたわら、休日には1人で旅行をしたり、興味を持ったことを実際に体験しに行ったり、イベントを企画したりして、ブログやエッセイに綴ったりして人気を博している人である。

 

本作のなかでも「なにわホネホネ団」に入団するために、タヌキ大の動物の皮剥きを一人でやり遂げる試験を受けたり。「金継ぎ」の施された家を見に行ったり。ガーナに自分が将来入るための棺桶を作りに行ったり(そのために選んだモチーフがポテトチップス、というかじゃがいも型)。中古マンションを買ってリノベーションしたり。

 

いかにもエネルギッシュでバイタリティに溢れていそうなテーマたちである。非常に楽しそうな写真や描写も多い。

 

しかし、あにはからんや割とダウナーなのである。タイトルは「メメントモリ・ジャーニー」。「死を思いながら、生を実感する旅」とでも言おうか。

 

これまた意外だったのだが、飄々と淡々とした文章で美しい世界を描く人なのだ。彼女の描く風景は厳かであり、新鮮であり、そのもの自身のもつ穏やかな光に満ちている。「それ、綺麗ですね」と素直に思うことができる。

 

どこかで低く薄く悲しみが川のように流れている文章でもあった。常に自らを突き放すような、観察するような視点を感じる。自分のたりないカケラを探すような旅であるようにも思える。どこか生きづらさを抱えているようにも見える彼女が、数々のムーブメントを生み出すことが興味深い。

 

「これから先なんでもできると思えるほど若くはない。かといって何もしないには、残された年月はうんざりするほど長い。」

 

せっかくマンションをリノベーションしたかと思ったら住まないのか!住まいを整えたことは彼女をさらに広い世界に導いたのだろうか。最近の様子をブログで見ると仕事で中国にいるらしい。

 

もしかして彼女は帰る場所を見つけるために遠くに行く人なのかもしれない。きっと大丈夫なのだ。いつか彼女が人生という旅路を終える時が来ても、ポテトチップス(というか、じゃがいも)型の棺桶が彼女に優しくおかえりを言ってくれるだろう。

 

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