兄の終い

兄の終い
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読み終わってひと休みしてから、まず私は風呂場の鏡のウロコ汚れを磨き落とし、夕飯で使った食器を洗い、銀行口座の残高を確かめた。

なるほど人が急に死ぬということは、ことほど左様にあれこれがつまびらかになり予想外のお金がかかるものなのか。そうだろうとは思っていたが実際のところを読むとなかなかに厳しい。

ずっと不仲で没交渉だった兄の訃報聞いた著者が、思いがけず兄の人生の終い支度をしなければならないことになる。きっとほぼノンフィクションである作品だ。

 

この本は読んで自分に置き換える登場人物がお兄さんか著者であるかで、読み心地がだいぶ変わるだろう。自分は明らかにお兄さん側になる可能性が高い。

 

せめて、その時が来た時にあの人はまったくだらしなくて困ったもんだったねと言われないようにと、とりあえず目先の皿洗いと、ずっとやらねばと思っていた風呂場の鏡のウロコ落としをすることにしたのであった。

 

それにしても著者に一緒に行動してくれる人がいて良かった。大変なことをするときは一人でしようとしないこと。これは介護や看護をするときもそうだろう。降りかかる人生の荷物は時にひとりで持つには重すぎる。大変なことを大変だと話し合い、いっちょやるぞ!と行動をともにしてくれる人がいることで救われることは多いはずだ。

 

そして、そんな時でも写真を撮りまくり、どこか客観的な視点を持ち続ける著者に物を作る人の業を感じてしまった。とはいえそれだけ大変だったんだもの、仕事のネタにくらいはしたいよね。

 

お疲れさまでしたと言いたいところだが、著者の苦労はこの本の後も続いたらしい。本当に気をつけなきゃな。今日もちゃんと食事をしたら皿を洗わねば(普通のことだ)。

 

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