慎治

   これは少年の戦いと成長の物語だ。同級生からいじめられ、自殺すら考えていた慎治は、教師の古池やその仲間の大人たちから戦い方を教わる。それは力を使う方法だけでなく、自分の世界を広げるという戦い方。

   古池からはガンダムとプラモデル製作。プラモデル屋の里見からはサバイバルゲーム。里見のサバイバルゲーム仲間の袴田からは格闘技の手ほどき。

   教える大人たちは慎治を子供扱いしない。専門用語がわからなくてもそのまま話し、何より自分が楽しんでいる。楽しそうにしている大人たちに慎治は興味を持ち、内容を理解しようとする。

   古池が初代ガンダムについて語る箇所は、結果的に子供の成長を促すための重要なポイントだろう。

「ガンダムがブームを巻き起こしたのは、それまでにどんなアニメもどんな日本のSFもやったことのない世界観を築き上げてきたからだ。子供たちもわからないなりに必死についていこうとした。」

   この辺の話をしたら止まらなくなる人がたくさんいるんだろうな。ガンダムの話と格闘技の話、興味深く流し読みした笑。いや、勉強になりましたよ。初めてガンダムを全体の流れで知れたし。

   大人たちが真剣に面白がって生きる限り、いじめはなくならなくても、子どもたちは救いを見いだせるかもしれない。

   そして子どもの成長はまた、大人たちも成長させるのだ。やはり面白くて爽快な作家さんだ。多作なところも素敵。読むものいっぱいあるな。

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