禍いの科学

禍いの科学
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人間は同じ信教や迷信を共有できることにより、少人数ではなし得なかったことができるようになったとあったのはサピエンス全史だった。成し遂げられるようになったのは必ずしも良いことばかりとは限らない。ということで人間の科学が導いた禍いの話である。

 

人類の壮大なトライ アンド エラー集。アヘン、マーガリン、化学肥料、優生学、ロボトミー手術、殺虫剤、ビタミン剤。人類のトライアンドエラーの犠牲は思っていた以上に甚大である。ソレってアレのせいなんだ、あの人の家族がそんなことに?!など知らなかったことも多い。

 

エラーはエラーだと認識すること自体が難しく、それぞれの出来事は今でこそそんなバカなと思うが当時はプロの科学者たちが真剣に研究した結果なのだと思うと空恐ろしい。そりゃ後世のものとしては彼らは特別な悪人なんだと思い込もうとして映画や小説にマッドサイエンティストを登場させたくなるわと思ったりもする。

 

しかしながら現在もまさに全世界でパンデミックと交戦真っ只中の人類としては読んで納得できることも多い。本来は客観的データに基づいたある程度長期間の調査によって導かれるべき結論は現実社会との狭間で揺れ動く。この本に書かれた出来事たちも実際のところは科学者の暴走ではなく、時の政治や世情、世論という大きな流れに科学が都合よく利用された部分があるのではないか。

 

病が治まっても人の流れが途絶えては生きていけない人類は根拠がないとわかっていてもアマビエにすがり、総合的で客観的なデータよりもショッキングな一部の切り取られた情報に一喜一憂して右往左往する。この本に出てくる科学の暴走と今のパンデミックどこが違うのか考えてみるのがいいかもしれない。

 

余談だが昔、家の本棚にあった気がする「沈黙の春」は読まないままだったので結構大きくなるまでミステリーだと思っていた。殺虫剤の話になんと詩的なタイトルつけたもんだとレイチェル・カーソンに驚いたものである。

 

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