詩歌川百景

これぞ吉田秋生の真骨頂だ。静かに怒りを抱える美少女と人生の哀しみの意味を知る青年。日常には彩りがあり、人々は若くても年老いていても、みな逃げられない過去を抱えている。

 

初めて吉祥天女を読んだときと同じ衝撃が蘇る。この人の作る物語は現実と人の歴史を混ぜ合わせる。

 

青年はわからないということを知っている。ままならないということを諦観している。少女は怒っている。ままならない現実を納得などできないと静かに心に怒りを抱えている。

 

シリーズ1冊目にしてこの読み応えに感嘆する。温泉旅館についての情報量の多さと緻密に絡み合った人間関係。これを同時進行できるのがこの作家の凄いところなのだ。

 

また新たなシリーズが始まって本当に嬉しい。生きていく楽しみが増えた。

 

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