任侠書房

こんなに面白くて、わかりやすくて、スリルとサスペンス、人情に、仕事や教育までも入れ込んで、話が非常にきれいにまとまる。このシリーズは本当に素晴らしい。

 

これが熟練の作家の腕なのかしら。予定調和だって良いのだ!いやむしろ予定調和サイコー!!ヤクザたちが、まったく畑違いの文化的な仕事で大活躍する「任侠」シリーズ1作目。本作の舞台は出版社。

 

苦労性で心配性のヤクザ、阿岐本組No.2の日村は、組長の気まぐれな文化的なことがしたい熱に巻き込まれ、潰れそうになっている出版社で役員を任命される。

 

それぞれの登場人物たちの性格がストーリーの中で自然に紹介され、若干物覚えの悪い私でもスルスルと頭に入る(このシリーズは2作目なのでレギュラーメンバーは知っていたとしてもね)。紹介するぞー!とか話展開するぞー!という作者の意思は感じられず、登場人物たちが勝手に動いているような感じなのに、とても自然に物語は展開する。

 

本作はビジネス本かのように、組織に属する仕事人の琴線をくすぐるワードが盛りだくさんだ。

 

PCオタクの構成員テツが潰れかけの町工場を救うアイデアを見つけた時、日村はすぐに行動する。

 

「ヤクザにとって1番大切なのはとにかく行動することだ。堅気がヤクザに勝てないのは、必死に考えないからであり、すぐに行動しないからだ。」

 

うん、それヤクザじゃなくても大切だよね。ぐずぐず悩んでる暇があったら、必死に考えてすぐ行動!!

 

町工場のために奔走するテツを見て、不安になる日村。本当にそのアイデアでうまくいのくか?失敗したらケツを拭くのは日村なのだ。だが、日村はテツの行動に水を差すようなことはしない。部下にはのびのび仕事をさせて、失敗したら自分が責任を取る覚悟。これぞ理想の上司。

 

組長の自由気ままな行動に振り回されても、文句を言うこともなく、一人覚悟を決め、対立するかもしれない組事務所を訪問したり。クライマックスのあのシーンでも危険を顧みず、飛び込んでいったり。

 

日村が仕事が出来て、格好良すぎて、本当に上司にほしい。もしくは結婚してほしい、笑。

 

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