これほど昏い場所に

「円熟した厨二」などと矛盾したことを思いつつ読了。政府や財界の中枢による陰謀論。マインドコントロール。ナノテクノロジー。シンギュラリティ。最新テクノロジーを使った悪事やその操作手法で描かれるスリラー小説。


 FBIを休職中の主人公のジェーン・ホークは、不可解な自死をとげた夫の死を追求するうちに、米国全土で広がる不審で不自然な自死の増加に気がつく。捜査を進めるうちに、見えざる組織からの妨害や脅迫を受け、愛息を友人に預け、単身、強大な敵と戦うことになる。

 とかく新しいものをフィクションに入れ込もうとすると、話が上滑りしたり、デビューしたての作者だと、その意気込みばかりが目立ってしまうようなこともあるが、本作にはそれなりの説得力があるのはクーンツのキャリアならではだろうか。

 実はクーンツ初読み。有名でファンも多いよね。キングと並び称されることが多かったようだが、キング派だったからか手がついていなかった。

 しばらくぶりの新作らしく、以前からのファンの待ってました!をよく聞くのだが気持ちはよくわかる。自分もシャイニングの続編が出たと聞いて同じこと思ったもの。

 調べたらなんとクーンツは70代前半?!そのお年でよくこれだけの最新技術を用いる小説書くもんだな。よっぽど優秀なスタッフがいるのか?いや、でもお好きな人はいくつになっても調べるのも含めて好きなのかな。

 小説家や漫画家の中には美女をとことんまで追い込んで酷い目に合わせるドSの人が時々いるが、本作のジェーンもなかなか酷い目に合う。夫をあんな目に遭わされ、息子も狙われたり。ギリギリのところで逃げ回りながら続けられる捜査は、ドキドキハラハラの連続だ。

 物語に絶体絶命のインフレを起こさせないためには、登場人物たちにむやみに「背筋が凍りついた」とか「巨大な闇」とか言わせすぎないことと、緊張と緩和をもうけることではないかと思う。

 ところどころで描かれる愛した夫との思い出や、友人や息子とのシーンは良い緩和をもたらす。その意味では後半は少し背筋が凍りつきすぎてる感はあったが、最後まで楽しんで読めた。

 さすがのベテラン、面白いねと思っていたらシリーズものであることに読み終わってから気づいた。むーん、クーンツおじいちゃんに長生きしてもらわないといけませんね。FBI捜査官ジェーン・ホークシリーズ続きが気になる!

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