「そんなことよりサメの話しようぜ」と『行け!稲中卓球部』の前野は言っていた。
『ジョーズ』は言うに及ばず、夏場になるとテレビ東京では、午後のロードショーで、サメ特集が組まれ、『トリプルヘッド・ジョーズ』、『シャーク・ナイト』、『ディノシャーク』、『シャークネード エクストリーム・ミッション』などB級サメ映画が放送されている年もあった。バカなタイトルとストーリーばかりだなぁ。ことほどさように、人のサメに対する関心は高い。
扇情的なタイトルと逆に、著者がサメに食べられそうになって、命が危ない場面は本書にはいっさい出てこない。むしろ、サメを見にいった海で、勝手に重症の低体温症になったり、クレーンから落ちてきたサメのヒレだか頭だかにぶつかって、気を失ったりしているばかりだ。
著者の溢れんばかりのサメ愛には、圧倒されるばかりだ。サメの姿かたちをに魅了され、その謎めいたミステリアスな生態に引き付けられ、日本や世界各地で一緒に泳いだり、解剖したり、食べてみたり。
著者は東海大学海洋学部を卒業後、同大学院で、海洋学研究科水産学で修理過程を修め、現在は「シャークジャーナリスト」と名乗り、世界中のサメを取材し、魅力をメディアに発信している。
全国でサメ好きの人向けに定期的に「サメ談話会」を企画・開催したりもしている。その中には、サメの歯の化石を集めるのが好きな小学四年生。埼玉県在住(海なし県!)で、自宅で複数種のサメを飼育する中学一年生。夏休みに「サメのしゅるいべつ 歯のけんきゅう(8目21種)」を研究課題にする小学二年生など。
子どもたちも、大人にまじって参加している。世の中には、年齢問わずこんなにサメを愛する人たちがいるのか。参考文献や映像の多さにも圧倒される。
「ジョーズ」で悪者にされたホオジロザメは無実だった。
サメのオスには2本おちんちん(交接器)がある。
サメは川(淡水)にもいる。シュモクザメは「処女懐胎」をする。
300年生きるサメがいる。白ワニ(ネズミザメの仲間)は母の子宮内で共食いをし、最後には1尾しか残らない超スパスタ方式で育つ。
ザラザラのサメ肌のうろこは歯に似ているのではく、歯がうろこからできた説。
などなどサメの生態、形状に深い畏敬の念を抱きつつ、サメに深すぎる愛をそそぐ人間たちに、若干引き笑いしながら読んだ。かくいう私も、著者や登場人物たちほどではないが、サメの話題があると、つい食いついてしまう。
では、ご唱和ください「そんなことよりサメの話しようぜ!」