イスラム教の国というのはこんなにバリエーションがあるものなのか。パスポートも持たずいい歳になってしまった自分としては高野氏の『人が行かないところに行き』の精神にいつも感心するばかりである。
この本に出てくるイスラム教国はイラン、アフガニスタン、シリア、ソマリランド、パキスタン…。原理主義国からゆるめとされている国まで様々である。
お酒の扱いについても飲んでいるのがバレたら逮捕投獄される国、家の中で仲間内で飲む分にはいいという感じの国、街場でもそれなりに飲めちゃう国とさまざまである。この本が出版された2011年以前とはさらに状況が変わっているだろうが。
高野氏が「私は酒飲みである。休肝日はまだない。」を旗印に、例によってわざわざ(基本的には)酒が禁止されているイスラム圏の国に行って出来れば地元の人と酒を酌み交わしたいという面倒、もとい崇高な目的を持って挑む紀行文である。
インテリ大学生のこずかい稼ぎの酒の密売。地酒を密造するすごいイケメン靴屋。砂漠の中にあるオアシス酒場とか。何言ってるかよくわからないだろうが地球上には許されても許されなくても確かな酒の文化があるものなのだ。
酒は人の仲も醸すと書いてあったのはもやしもんだっただろうか。確かに高野氏は酒が飲みたいということをエンジンにイスラムの市井の人々の生活を垣間見る。各国で酔っぱらいながらもよくこんなにいろんなこと覚えてましたねと半笑いになって読み終えた。