ノーベル文学賞を受けたメキシコの詩人、オクタビオ・パスは「孤独の迷宮」でメキシコ人の死生観をこう記しているそうだ。
「ニューヨーク、パリ、あるいはロンドンの市民にとって、死は唇を焦がすからと決して口にしない言葉である。反対にメキシコ人は、死としばしば出合い、死を茶かし、かわいがり、死と一緒に眠り、そして祀る。それは彼らが大好きな玩具の一つであり、最も長続きする愛である(略)隠れも、それを隠そうともしない。もどかしさ、軽蔑、あるいは皮肉をこめて、死を正面から見つめるのである。」
メキシコ人、死で遊びすぎです。もしくは、もともと死と生が近い国なのか。
前作、犬の力が、牧歌的に感じられるようだ。本作では、凄惨を極めるメキシコの麻薬戦争とともに、ジャーナリストがそれとどう向き合ったのかが描かれる。
ジャーナリズムって、一定以上の秩序が約束された場所でのみ有効な、嗜好品なのかと思い知らされる。
パブロの文章に、ジャーナリストとしての最後で最大で最強の意思を感じるが、それはあまりにも虚しく哀しい。かなり重たい内容ではあるが、これもまたウィンズロウの傑作であることに間違いはない。