以前著者の本を読んで、何故、この人は周囲に変な人ばかりいるのか、と思ったことがあったが、はっきりわかった。この人自身が大した変人なのだ。
普通の人は、真夜中に何か面白いことはないかなと思って「アフリカ 中東 マラソン」でインターネットを検索をしないし、うっかり見つけたサハラ砂漠を走るマラソンで、ほぼマラソンをしたことがないのに、いきなり42キロを完走しない。
普通の人は、ブルガリアで、見ず知らずの体躯のいい薔薇の香りのするおじさんについて行って、手作りのワインや料理をご馳走されながら、その気もないのにおじさんに口説かれない。
西サハラの女性たちが印象に残った。長く戦争や内戦をしていた国は、男性が戦地にいき不在になるため、イスラム圏では珍しく、女性中心の社会になることがあるそうだ。
来客の対応。細かい商売。隣近所との物資ネットワーク作り。看護から軍事使者までこなすらしい。
まるでよしながふみの「大奥」のような世界だ。
「深い闇と強烈な光が交錯する西サハラ世界と同じように私たちランナーも躁と鬱を行ったり来たりしている。マラソンと民族運動の合間を漂っている。」
ゆらゆらと異世界を行ったり来たりして、著者はまた変人の輪を広げていくのだ。