万人には好かれないだろうと知っているから、この漫画を私は人に強くは薦めない。個性が強くて、物事や人を拒否することを恐れず(それは嫌われることを恐れないということである)、でも何人も何事もあるがままであることを否定しない。
食べたことのない美味しいものや、自分と違う生き方をする人を描くことで描かれる内容は、時によって違和感を感じたり嫌悪感を感じることすらある。多様であることを受け入れるってことは口で言うほど綺麗なものじゃないんだよと叩きつけられる気がする。
それでもしばらく間を置いてこのシリーズが全部手元に集まってしまった。相変わらず面白い。簡単には出来ないが作中で出てくるメニューをそのうち作ってみようかなと思う。
この作家にはいつもおのれを試されている気がする。愛想のいい対応をして空気を読んで自分を殺して耳障りののいいことだけを身の回りに置いて生きていくことは正しいことなのか。
ぬるま湯につかることに冷や水を浴びせられるようなカンフル剤のような、それでいて見たことのないものへの憧れを教えてくれる。そんな作家に出会うことはあまりない。私は多分今後もこの人の本を買っていくんだろう。