著者は樹海コーディネーターとして語りかける。樹海いかがっすか~そんなには危なくないですよ~。でも時々ちゃんと死体ありますよ~。
いっそ、いさぎよい金儲けの姿勢。サブカルとしての樹海を売り物にするためのわかりやすいハウツー本である。
サブカルチャーとは私見ではこんなイメージである。
ちょっと不気味
それなりに歴史がある
学者など本当の専門家が少ない(もしくは目立たない)
シロート専門家はそれなりにいる
マニアックなファンは割とたくさんいる
うん、樹海はおおむね当てはまっているね。
樹海が不気味なのは自殺の名所として名前が売れてしまっているからだ。松本清張の小説「波の塔」で取り上げられたのがきっかけという説もある。
磁場がおかしくなっていてコンパスが効かなくて、迷うと出てこられなるという話も聞いたことがある。本書によるとそれは都市伝説なのだそうだが。
しかし樹海は決して自殺しやすい場所ではない。樹海までの移動手段は限られ、車がなければ行きづらい。富士山の噴火によって流れでた溶岩の上に繁る樹木たちは、深く根を下ろすことができないため太い幹を伸ばすことは出来ず、身体を預けるには頼りない。
それでも、ここまで有名になってしまったのはマスコミの情報に影響されてしまったからではないかと語られる。悲劇を防ごうと行われた報道が悲劇を誘発する。皮肉なことである。
樹海をふもとにもつ富士山は、近年世界遺産に選ばれパワースポットとしても人気となっている。
富士山を御神体とする富士山本宮浅間大社は、木花之佐久夜毘売命(このはなのさくやひめのみこと)という畏れ多くも可愛らしい名をお持ちの祭神をます。
この神社に樹海ツアーを楽しんだ後、祟りを恐れた外国人アーティストが訪れるという珍エピソードも本書には収録されている。
学術者としての樹海の専門家というのはいるのだろうか。樹海の地盤とか樹海の植物とかならともかく、自殺の名所になってしまった文化的な背景となると分野が重ならないので全体としての専門家は成立しないのではないだろうか。
しかし本書の著者を含め樹海について語る学術者以外の人々はわりに多い。そして、それを楽しんで読んだり見たりする人々も、外国の人も含めて、これまたわりに多くいるようだ。著者が企画する「樹海ナイト」なるイベントも毎回満員御礼となり、それなりの客を集めているようである。
本書の中で著者は「それは儲からないからやらない」というむきの発言をしている箇所がある。樹海自体を面白がっているのはさておき、あくまで商品として扱う様子がある意味潔く「食えないものを商売にしたって仕方ないでしょうよ」という強い生者の力を感じるのである。