鬼滅の刃を探しに1日に何軒も書店を回るのを何日か繰り返しながら思っていた。自分が買えなかったとしても本がこれほど売れていて心から嬉しい。
出版社や印刷所、配送会社や書店はコロナ禍で通常と違う仕事を求められる中、全力で本を作り流通させ売っていた。
連日行くと、書店は出来るだけ多くの人に行き渡るように買える冊数を制限したり、(恐らく)時間帯ごとに少しずつ在庫を棚出ししたりして工夫して売っているということがわかってきた(取次と上手くいっていそうな店もぼんやりわかってきた気がする)。
外装のビニールは心なしか通常より粗めにかかっているような気がする。普段漫画を買うと挟まっている広告のチラシがどの巻にも全く入っていなくて、チラシを入れる間もなくどんどん売れているのだなと売れ行きの速さを実感した(あのチラシはどの段階で入れられるのだろう?出荷時?書店で?)。
本の業界で働く人というのは本を好きな人が多い。自分の好きなものを仕事にできる人というのは世の中の多数ではないだろうし、好きなものを仕事にしても必ずしも報われるわけではない。最近の本に関わる仕事が儲かる仕事であるとは言い難いだろうし、それどころか紙の本は斜陽だと言われて久しい。
そんななか鬼滅の刃ブームという大きなチャンスをつかみ、好きなことを仕事にした人々が好きなもののために全力で仕事をしているのを感じるのは非常にテンション上がった。
普段本を買うのに Amazonも楽天も利用する。しかし今回のブームにおいて書店の役割を実感した。Amazon や楽天で品切れや便乗値上げが続くなか、書店では毎日定価の本が確実に動いていた。作る人々、届ける人々、売る人々の何としても客に届けるという強い意思を感じた。別に本の業界の人間ではない。しかし人々のプライドと自負を感じたのである。
結局1週間ほどかけて全巻を買うことができた。自分のコレクション癖と欲しいものを我慢できない執着を半ば呆れながら面白がっていたのだがそれだけではなかった。
私は嬉しかったのだ。これほど愛される本があって、懸命に売るために仕事をする人がいて、それでも間に合わないほど売れていることをメディアを通してでなく自分の目で見ることが出来たから。踊る阿呆と見る阿呆なら確かに踊ったほうが楽しいのだと実感した鬼滅の刃ブームだった。
肝心の内容についてであるが何を述べてもネタバレになってしまいそうなのでこれから読む人のために一言に留めておく。大変面白かったです!!
ピンバック: ザリガニの鳴くところ | 散らかった本棚はいつもかたづかない