BANANA FISH

アニメが始まるそうなので、再読。

ニューヨークの不良少年グループのリーダー、アッシュは金髪碧眼の美少年で、その見た目に反し、優れたシューティングテクニックと類い稀なカリスマ性とリーダーシップでグループのトップに君臨している。


ある時、グループ配下の人間が襲っていた男性が、今際の際に「バナナフィッシュ」という謎の言葉を言い残して死ぬところからストーリーは始まる。

AKIRAの連載から少し遅れて始まった本作の初期の絵は、その影響をうかがわせるように硬質で劇画調の特徴がある。

ストーリーもコルシカやチャイニーズマフィア、果ては米国の陰謀が渦巻き、ハードボイルドやサスペンス要素を持った非常にスケールの大きなものである。これを別冊少女コミックで連載していたんだから、多様性のある非常に良い時代だったのだなと思わせられる。

バナナフィッシュは何にフューチャーして読むかで、見方が変わる漫画だ。

主人公のアッシュは、類い稀な美貌と天才的な頭脳、優れた運動能力を持ちながら、幼い頃から虐待を受け、逆境に苛まれていた。

それを自力ではねのけ、不良グループでリーダーの地位に立っても、マフィアのボス、ゴルツィネに能力を見出されても孤独だったアッシュは、日本人の青年、英二と出会い、初めて救いを見出していく。

ゴルツィネの、アッシュへの妄執ともとれる感情は、ほぼ愛憎劇であり、ある意味で永遠に届かない片恋のようだ(虐待してたんだから当たり前だけど)。

作中でアッシュを神の器と評し、誰よりも憧れ、恋い焦がれているのは、このハゲ親父なのではないかと、少しだけいじらしい気持ちになる。

チャイニーズマフィアの美貌の末弟、月龍もまた、その生まれから自分の血族を呪い、自分の生まれそのものを呪って、それに縛られて生きている。

自分にない救いを見出したアッシュを羨み、対象である英二に憎悪を向けることになるが、まあ英二にイライラしちゃう気持ちはちょっとわかる気もする。

その他にもショーター、シン、ブランカそれぞれが悲しみや苦しみ、逃げられないしがらみを持ちながらストーリーの中で生き生きと駆け回る。

バナナフィッシュは、私にいろいろなものをくれた。サリンジャーとヘミングウェイをちゃんと読んだきっかけはこの漫画だった気がする。

本作のタイトル、「バナナフィッシュ」の元になっているサリンジャーの「バナナフィッシュにうってつけの日」が収録されている「ナイン・ストーリーズ」。ヘミングウェイの「海流の中の島々」、「キリマンジャロの雪」。どれも若いうちに読んでおいて良かったし、今でもたまに読み返したくなる本だ。

スピンオフの中で作者の吉田秋生が述べているが、冷戦時代を前提に進むストーリーの連載中に、ソ連が崩壊してしまったり、近現代の歴史との関連を見るのも興味深い。

アクションものとして各戦闘シーンの戦術をみるのも面白い。アンブッシュって言葉はこの漫画で覚えたような気が。マッドサイエンティストなんてのも多分これで知った。本作での科学者はロクなことしないヤツばっかりで、科学者の地位向上には全く役立っていないけれども。

しかし、これだけ要素を入れ込んで話が破綻することもなく、全ての登場人物を終幕まで連れていった吉田秋生の頭の中はどうなってるのか。最初の段階で、どこまでの構成を想定して連載を始めたのか聞いてみたい。

ニューヨークの街並みや図書館、ケープコッドの風の強い丘のイメージなど漫画ならではの風景描写も、今回読み直しても鮮やかなままで、やはりこれは永遠の傑作だと再確認した。

老婆心ながら、願わくばアニメの出来が悪いものではありませんようにと強く祈るばかりなのである。

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