パードレはそこにいる

こないだ読んだ沈黙では、キチジローがパードレパードレと神父に呼びかけていたが、本作ではそのまま、父の意味である。ただどんな種類の父かというと。。

タイトルがじわじわ生きてくるね。

幼い頃に謎の男に誘拐され、11年間監禁されて過ごし「サイロ(に閉じ込められていた)の子ども」と呼ばれたダンテ・トッレ。脱出し保護された後、成長したダンテは失踪人探索専門のコンサルタントをしていた。

そんなダンテを、ある事件から休職中だった女性刑事のコロンバ・カセッリが、幼児失踪事件の捜査協力を得るため訪ねてくる。

コロンバもまた休職のきっかけとなった事件で、心と身体に大きな傷を負い、PTSDに苦しんでいた。

しかし、このコロンバがたくましい。(一般的には)多少の(どころではない)怪我を物ともせず、トラウマを抱えながらもグリグリと事件の真相を追っていく。美形でありながら、体躯にも恵まれた人物である様子。

長期間の監禁のトラウマから閉所恐怖症、ヘビースモーカーでコーヒー依存症のダンテ。このヘナチョコで頭脳明晰な男と、美形パワフル女刑事が手を組んで捜査に当たる。このヘナチョコパワフルコンビがなかなか新鮮。

ちょっと都合が良すぎるか?と思わせる展開は随所にあるし、結局、二転三転どころか、四転五転くらいしたかな?くらいの後半の転がりっぷりに多少疲れはしたが、スリラー小説として非常に起伏にとみ、楽しんで読めた。寝不足になっちゃったもの。

最初はお互いを信頼できずにいたダンテとコロンバ。捜査を進めるうちに次第に互いを信頼するようになる。

爆破され火のついた建物に閉じ込められたコロンバを、ヒョロヒョロダンテが閉所恐怖を乗り越えて助けに飛び込んでいくところなんて、それ恋?!恋なの?!?!とワクワクしてしまった。

テンポが良くて、どこか色気のある文章はイタリアサスペンスならではなのか、作者の持ち味か。原題を「パードレはそこにいる」と訳した訳者にもセンスを感じる快作だった。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です