レッド・プラトーン 14時間の死闘

一度軍隊に入ったら、徴兵制などの期間限定のものでない限り、何度も戦場に行くのかと思ってたが、一般的にはそういうものではないらしい。



「9.11同時多発テロの後、アメリカはイラクとアフガニスタンで大規模な戦争に従事した。この戦争ではそれまで例がなかったやり方で、国民の一部にすぎない若者を、一度や二度でなくそれ以上の回数海外に出征させ、たびたび戦闘に投げ込んだ。」

若者を何度も戦争に送り込まなければいけないほど、泥沼にハマっていたということなのか。 

戦闘前哨キーティングで、米兵50人余りが300人以上ものタリバンの大部隊に包囲され、絶滅の危機に瀕した際の戦闘ノンフィクション。

軍人家系だった著者はこの戦闘に小隊リーダーとして参加した。元兵士で別に物書きだった訳ではなさそうな人だが、文章が抜群に上手い。

それぞれの兵士たちのキャラクターを描きつつ、戦闘シーンでの多面的な描き方は臨場感がありながらも、冷静な視点を欠くことはない。

前哨とは軍事用語で、「本隊の休止・集結・宿営に際して、敵部隊の奇襲を防ぐために、やや離れた場所に置かれる警戒部隊のこと」なのだそうだ。

れにしてはキーティングは切り立った山の窪みにあり、奇襲を防ぐというより、奇襲をされやすいロケーションとして非常に悪いところにあったらしい。

先の見えない戦争で、悪条件を是正する余裕もなくなってしまったことも、本書の戦闘の原因の一つになっていたのではと本書では述べられている。

アフガニスタン政府の治安維持強化支援という建前で、僻地の戦闘前哨を使って反政府武装勢力の資源移動を停滞させ、大都市への攻撃を阻むという目的でキーティングが設けられたにせよ、末端の兵士たちはその目的や背景を把握したり理解することを求められる訳ではない。ただその場を守ること、生き延びることのみが目的となる。

彼らのタフさとユーモアには舌を巻くしかない。ウンコしながら、難しい場所での軍事ヘリコプターへの緻密な指示をしたり、内臓出てるのにタバコを吸いたがっているようなそぶりでその場を和ませたり、火事の延焼を防ごうとして木を切り倒し、危うく味方を殺しそうになったり。

私はあまりにも戦争について何も知らない。目的もわからないし、理解できないのに、劣悪な環境の中、他国で防衛や戦闘に参加する気持ちとはどういったものなのだろう。

兵士たちはみな思った以上に若い。若者たちが普通の暮らしをしていたら絶対に見ないものを見ながら、自分と仲間たちと敵の命を賭けて戦うということとは。

日常に帰った著者は、失くした仲間たち、生き抜いた仲間たちと魂のようなもので深く結びついているようだ。本書はそんな仲間たちに捧げるためのものなのだろう。

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