女房が宇宙を飛んだ

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なぜ、今時、この本を読んでいるのかというと、先日、人と話していた時に「昔、職場の後ろにあった慶應大学病院の女性の医者が、宇宙飛行士になってね」と言われたからである。

そんな、となりの家のみっちゃんがお嫁にいったみたいに、宇宙飛行士のこと話すことってある?!と面白がっていたら、その夫である著者の書いた本が面白いとさらに続き、これは読むしかないなと思った次第なのである。

著者は、日本人女性初の宇宙飛行士、向井千秋さんの夫で病理学者であり、宇宙飛行と宇宙飛行士オタクである向井万起男氏。

どこかで見たことあると思ったら、宇宙兄弟にこの人がモデルの登場人物が出てきていたからか。

向井氏が宇宙飛行オタクなところが、本作を面白くしている1つのポイントであるように思う。

向井千秋さんは世界で何人めの女性宇宙飛行士だったのか。スペーシャトルが飛行する仕組み。宇宙で寒いと感じるわけ。ミッションコントロールセンターについてなど。宇宙オタクならではの視点と、気安い語り口でわかりやすく書いてくれているので、理解しやすい。

ミッションコントロールセンターには、宇宙で起こるさまざまな出来事に対処するために、各専門分野の多くのエキスパートが控えている。

フライト・ディレクターは、オーケストラの指揮者のように、それらの膨大な情報を理解することができ、取捨選択する権限を与えられている。

しかし、実はその決定事項を宇宙にいる飛行士たちに伝えるのは、彼らと同じ訓練を受けた宇宙飛行士であるキャプコムである。

宇宙飛行士の気持ちは宇宙飛行士にしかわからない。それぞれの専門分野と実体験を尊重した、実にイカしたシステムであると思う。

向井万起男氏は、わりと俗っぽいところがある。そして趣味はアメリカ大リーグ野球選手名鑑とNASA宇宙飛行士名鑑を暗記することであるらしい。

そんな人だから、宇宙旅行から帰ってきたばかりの妻に、お疲れさまとか、無事で良かったより先に、君の宇宙滞在記録は女性宇宙飛行士の世界新記録だよ!とか言って、妻にポカンとされてしまうという、斜め上の俗っぽさなのである。

本作は壮大な物語ではない。もちろん、向井千秋さんが地球を、白い小さな模様のついた青いドレスを着て、背筋を伸ばした貴婦人に例えたりするくだりは美しい。

しかし、それよりもマイペースで努力家な人々が、それぞれの持ち場でベストを尽くし、相手を尊重し敬意を払い、宇宙飛行を楽しんでいるという様子は、宇宙飛行は特別な人間がしている特別なことではないのかもしれない、と思わせるものだった。

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