放射線について考えよう。

放射能と放射線の違いもわからない人間が、感情的でなく政治背景などに(出来るだけ)左右されずに、この手の話を知りたいと思った時に、難しくなく原子や放射線の仕組み、人体への影響とその取り扱いかたを知るのに適した良い本だ。


 この分野の話になると玉石混交のデマが行き交う。一度事故や事件が起きるとその被害の甚大さと悲惨さにデリケートになりエキサイトしがちなので、ちょっと簡単に触れるのが難しい分野だと思っていた。

 冒頭で著者が述べている。デマや嘘に踊らされずに正しく物事を恐れるためには知識が必要である。そもそも恐れているものはなんなのか、それが起きる理屈は。付き合っていく余地があるのか、あるならばどのようにするのが最善なのか。

 原子と原子核について。放射線を出すのは放射性同位体、放射性同位体を含む物質が放射性物質。放射性同位体が単位時間あたりに出す放射線の数が放射能。放射線の出す熱はヤヴァい。放射線は電離させて分子を破壊するからヤヴァい。生殖・妊娠に関する影響、遺伝的障害について。

 放射線をまったく浴びない「ゼロベクレル」なんてありえない。そこらへんの土や岩盤からだって放射線は出ているからね。では人はどれくらいまでなら放射線を浴びても大丈夫なのか。

放射線の出る理屈を、多分中学生くらいの理科の知識があればわかるように、可愛らしいイラストも交えて書かれている。そういえば学生時代、原子とか原子核とかやったわねーと思いながら、ほぼゼロからのスタートでもなんとなくはわかった。

 先生、ゼロベクレル派の人にだいぶやられてるらしく、やさぐれてる箇所が時々見えるがそれはご愛嬌。わからない人にわかりやすく伝えようという強い意志を感じる良書であった。

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