誰も寝てはならぬ

   「誰も寝てはならぬ」というこの漫画。このタイトルのモチーフがオペラだと何年も気づかなかった。プッチーニの「トゥーランドット」とか言われても、未だにそういうものがあるくらいにしか知りはしないのだけど。

   音楽は全く関係ないように思います。昔、モーニングで連載してて何がツボに入ったのかわからないけど、何だかずっと家にある。たまに読むといまだに面白い。

   舞台は東京、主に赤坂。主人公のハルキちゃん(おっさん)は高校の同級生だったゴロちゃん(おっさん)が社長を務めるデザイン事務所で仕事をしている。

   春樹ちゃんのおじいちゃんは有名な日本画家。センスはあるが、なんせ体力と気力が足りない。

   嫁さんは間女に寝取られ離婚。仕事はボチボチだが、いいなと思う女性がいても好きなんだか好きじゃないんだか、口説くんだか口説かないんだか。すぐメソメソグズグズして強力な身内の女性陣にどやされる日々。

   社長のゴロちゃんも仕事はできるが、高校時代からめっぽう女にモテる。モテてモテて美女の幽霊が出るという物件で幽霊に色目使って格安で借りるまでする力量(?)の持ち主。

   もともと2人は関西の学校の同級生だった設定だからなのか、作者がそういう人なのか、大したことの起きない日常生活をグスグス綴りながらもウフフと笑える話が続く。

   ライトなことから実はヘビーなことまで、人々のてんやわんやが綴られるのだけど、関西弁でツッコミ、ツッコまれしていくのに何だか妙に癒される。寝る前に読むのにちょうどいいというタイトルと真逆の作品性。

   余談だがトゥーランドットには「ピン」「ポン」「パン」という三人の大臣も出てくるらしい。昔の作家さんたちは洒落たことをしていたんだね。

   作中で取り上げられている事柄も、私に学がないばっかりに気づいていないオマージュとかモチーフとかがまだあるんだろうな。結構長いことスルメのように楽しめる漫画を買った若き日の自分にありがとうと言いたい。

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