子ども時代と骸骨というのはなぜかわからないが相性がいい。不気味さと死そのものが、逆に若い生を際立たせるのか。キングの「スタンド・バイ・ミー」の原題もそんな感じじゃなかったっけと思って調べたら、あっちは「THE BODY(死体)」でした。うん、直接的だね。
幼い頃に嫌な教師に嫌がらせするために骨格標本を盗み、山に捨てに行った仲間たち。大人になってそれぞれの人生に煮詰まってきた頃、その中の一人の豊はあれは本当の人の骨だったのではないかと疑念を抱き友人たちを訪ねることにした。
初読みの作家さんだったが、以前読みたいと思っていた「愚者の毒」の作者だった。存外に自分好きな人の様子である。作中には彼と同じ名前のミステリー作家が出てきて重要な役割を果たす。
齢四十も過ぎれば人によっては乗り越えてきた山のひとつふたつあっても不思議ではない。むしろ人生の山登りや吊り橋を渡る真っ最中という感の幼い頃の仲間たち。
友人の、それヤバめの妄想じゃない?という疑問につきあっている間に、幼い頃の気持ちを思い出し、現在の停滞し鬱屈した自らを省みるようになる。
さらに調べを進めるうちに、無邪気に過ごしていた子ども時代、実はすぐ隣には大きな闇が口を開けていたことに気がつくことになる。
面白かったですよ。読みやすいし。複数の視点をつなぐ物語の構成もそれほど混乱することなく読み進められたし。
ただ、いかんせん次に控えてる「壊れた世界の者たちよ」が気になりすぎて浮き足だった読書になってしまって申し訳なかった。