兄の終い

兄の終い
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読み終わってひと休みしてから、まず私は風呂場の鏡のウロコ汚れを磨き落とし、夕飯で使った食器を洗い、銀行口座の残高を確かめた。

なるほど人が急に死ぬということは、ことほど左様にあれこれがつまびらかになり予想外のお金がかかるものなのか。そうだろうとは思っていたが実際のところを読むとなかなかに厳しい。

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流星ひとつ

流星ひとつ
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「流星ひとつ」とは言い得て妙であった。沢木耕太郎にとっては藤圭子は流星だったのか。鮮やかで、明るく、強く、跡を残して消えていく。

優れたインタビューというものはどういうものだろうか。本人も知らないその人を引き出すようなものだろうか。現役の歌手だったころを知らないので、私にとって藤圭子の知識は、あの宇多田ヒカルの母親でたいそう歌がうまかったらしいことと、晩年難しい状況であったらしいということだけだ。

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右大臣実朝

右大臣実朝 岩波
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去年一年大河ドラマの「鎌倉殿の13人」を大変楽しんでみていた。そして、いくら史実とはいえ三谷幸喜は何と鬼のような脚本家なのかと思っていたのである。繰り返される裏切りと粛清。展開もこれまた下げる前に必ずといっていいほど上げてから急降下させるので余計に観ている方のダメージが増す。

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地獄変・偸盗

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なぜなのかよくわからないが最近「藪」という字が気になって「藪」と言えば『藪の中』ということで読むことにした。先日『蜘蛛の巣城』で弓矢に射られまくる三船敏郎を何かで見て、黒澤映画の三船敏郎を見たのもきっかけかもしれない(『羅生門』は芥川龍之介の『藪の中』が原作。)

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喰うか喰われるか 私の山口組体験

喰うか喰われるか 私の山口組体験
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タイトルほどは劇的な本ではなかった。どちらかと言うと「俺とヤクザと時々、細木数子」という感じだった。50年に渡りヤクザを追いかけてきたノンフィクション作家が自分の人生とともに当時のヤクザとのやりとりも振り返る内容。

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一度きりの大泉の話

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苦痛から逃れるために自分なりのやり方を何とか覚えたにも関わらず、無関係の他人にそれをやいやい言われ、説明するために苦痛だったことを思い出して本まで書かざるを得なかったとは。なんとお気の毒に。しかし、この絞り出されるように作られた本に対して、勝手ながら私は少しホッとした。

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ギケイキ

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ご多分に漏れず三谷幸喜も大泉洋も大好きなので今年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を毎週楽しく鑑賞している。楽しくというにはなかなか中身がヘビーだったりもするのだが、平安・鎌倉時代だから仕方ない。現代から見ればなんと野蛮なと思う場面が多々あるが面白いものは面白いのである。

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