【 再読 】ミャンマーの柳生一族

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ミャンマーという国がどうも気になる。全くもって縁もゆかりもないのだがニュースや読み物があるとつい見たり読んだりしている。西原理恵子氏のミャンマーでの僧侶体験漫画を読んだのがきっかけだったか、この本の作者の納豆ルポがきっかけだったか。食事が美味しいらしく住まう人々が穏やかで人間味に溢れ、しかしどこか変わった人が多いというイメージである。自分の読む本に偏りがあるため実際とは異なる可能性が高そうであるが。

 

軍によるクーデターと反対する民主化デモにより、最近またにわかにミャンマーの名前をニュースで聞く機会が増えた。少し見聞きしただけだと、民主化運動のシンボルであるアウン・サン・スーチー氏が再び軟禁され、軍が強引にクーデターを起こしたように見える。しかし、スーチー氏も少数民族のロヒンギャに対する対応で良くない方の話題になっているのをしばらく前に聞いた。

 

表面的に聞こえてくる出来事だけが世の中で起こっているすべてと思うほど素直な性格ではない。ということでミャンマーで過去に何があったのか復習のために再読である。興味本位でしかないので高野氏が以前のミャンマー軍事政権を徳川幕府に、情報部を柳生一族に例えるギャグとも本気ともつかないこの本くらいがちょうどいい。

 

イギリスの植民地統治からの独立を目指したアウン・サン(スーチー氏の父)とナンバー2だったネ・ウィンはビルマ(旧ミャンマー)を脱出し中国へ向かう途中で日本軍に捕まる。日本軍の説得を受け、日本の後ろ盾をもとにイギリスからの独立を目指しすことにしたアウン・サンら。日本軍がヤンゴンを占領し新しいビルマの統治者となった1934年、東條英機はビルマ独立を宣言し、アウン・サン将軍は国防大臣に、ナンバー2のネ・ウィンは軍司令官におさまった。

 

日本の傀儡政権にされたアウン・サンとネ・ウィンは密かに反日工作を進め、1945年に叛旗を翻し日本の軍事顧問を射殺し、第二次大戦後は真のビルマ独立のために奔走する。高野氏は、アウン・サンの理想は「外国からの干渉を排除してビルマが自立すること」、「民主的な国家を建設すること」、「ビルマ人に反抗的な少数民族を取り込んで国家統一をはかること」であったとする。

 

しかし独立直前の1947年にアウン・サンが道半ばで暗殺されてしまったことでミャンマーの運命は大きく変わる。独立は達成されたものの、独立の英雄的なリーダーをうしなったことで政治家たちは内輪もめばかりし、少数民族は不満を募らせビルマ連邦から分離独立をしたいと言いだす。事態を打開しようとクーデターを敢行したの前回のミャンマー軍事政権の基を築いたネ・ウィン率いる国軍だったのである。

 

「外国からの干渉を排除してビルマが自立する」ためにどこの国からも援助や貿易協定を断り、東南アジア諸国からも距離をとるというまるで徳川幕府の鎖国のような政策を取った国軍。ビルマ式社会主義を標榜し、国内の企業やビジネスを国有化し国家統一をはかった。

 

しかし世界的な民主化の流れの影響は避けられず、欧米が主導する民主化運動の指導者として祭り上げられたのは独立の英雄アウン・サンの娘であるスーチーであった。ネ・ウィンといえども英雄の娘を粗略にはできない。自らの独立の出自を否定するようなことはできず、こうして前回のミャンマー軍事政権下で一面的にはお家騒動ともいうべき抗争が行われていたのである。

 

今回の民主化デモの参加者は軍事政権下を知らない若い世代が多く参加しているというニュースを見た。ニュース的には民主化され(鎖国が解かれ)徐々に力を失っていた軍部が再び権力を手にするためにクーデターを行ったとなっているようだ。見える背景以外にどんな背景があるのだろう。高野氏の本を読み返しながら、落ち着いたら今回のクーデターについて氏の考察をまた読んでみたいと思っている。

 

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