ほんのちょっと当事者

ほんのちょっと当事者
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的確なタイトルであると思う。専門家でなく、第三者でもなく「ほんのちょっと当事者」。読んでいると少し不安になる。この微妙な不安感は著者自身がそれぞれの問題に片足もしくは両足を非常に無造作に突っ込んでいて、この人いつか足を取られて転ぶんではないかと感じるからだ。

 

この人の実家は最近で言うところのある程度太い家なんだろう。「太い」とは経済的に(ある程度以上)恵まれていることを指す俗語であるが、この言い方が一般人の中でも言われる様になったのは何がきっかけなのだろう。ナニワ金融道か?

 

若さゆえの浅はかさで作ったクレジットカードでの3桁を超える借金を尻拭い出来るくらいの経済力はあるおうちで育った著者。恵まれていて良かったねと言わざるを得ない。一歩間違えればすぐに宮部みゆきの火車の世界が口を開けて待っていたのだから。

 

隙の多い人生であることを、文章を書く武器にしているのかなという印象の著者である。もしくはわざとデフォルメしているのか。

 

著者に限らず、危なっかしい人や危機に瀕した人が一歩道を間違え、そこに救いの手がないとこうなってしまうのかという例がいくつか提示されている。

 

高音域難聴。ネットカフェで出産した嬰児を窒息死させた女性。性暴力。介護と看取り。夜尿症。津久井やまゆり園の障害者殺傷事件。派遣労働と生活保護制度。身内の遺品整理。まとめて文字化すると何とも人間界の重たい課題ばかりである。

 

この本を読んでいると重たい課題たちがそれほど遠くにあることではないことに怖くなる。しかしこの危なっかしい人が何とか人生を渡っていく様子を読んでいると、人間は多少のことがあってもちゃんと生きていけるのだと安心できるような気もするのである。

 

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