ミャンマーの柳生一族

そのうちに見なければいけない映画リストにずっと入っている「柳生一族の陰謀」。あの高野氏がミャンマーを舞台に、この映画に擬して書いた本があると知っては、読まずにいられない。


面白い作家は、皆フィルターを持っている。高野氏のフィルターを通ると、舞台になった国は、ちょっと、とぼけた、愉快な人々が住む国になる。探検部の先輩、船戸与一の取材旅行について、ミャンマーへ行くことになった高野氏。ふとミャンマーの軍事独裁政権は「徳川幕府」、軍情報部は「柳生一族」に当てはまるのではないかと思いつく。

 

軍人(武士)が一切を支配し、立法・行政・司法の権力を握るところ。農業と工業を国家の基本と位置づけ、商業をいやしむ精神は「士農工商」と同じで、江戸時代初期の頃の特徴ではないかと。

 

ミャンマーの柳生一族(軍事政権の情報部)のアテンドで旅行することになった高野氏。どんな厳しい監視と検閲を受けるのかと戦々恐々ミャンマーに赴くが、柳生一族たちは、実は、、、。外で読むとニヤニヤが止まらなくなるので、注意が必要。

 

借り切ったタクシーで郊外の集落へ向かう途中、車がエンコしてしまう。運転手となぜか同乗していた運転手の兄貴分は、これもなぜだか、それぞれ別の方角に修理を頼みに行き、1時間たっても帰ってこない。なぜ別の方角に行くのか、何を考えているのかよくわからない。おまけに船戸与一も「ちょっと、おれ、糞してくる」とか言って何十分も帰ってこない。皆の帰りを待ちながら、田舎道にポツンと座り込む著者の様子を、思い浮かべるだけで、笑いがこみ上げる。

 

柳生一族のみそっかすとの意味から、勝手に「柳生三十兵衛(みそべえ)」と名づけられた男は、見張りの意味なのか、著者のトイレにまでついてきて、事が終わって扉を開けると、「うん、よかったな」みたいな無意味にあたたかい微笑みを浮かべる。

 

「柳生眠たし」
「柳生仕事すべし」
「柳生の怠慢」
「柳生懐柔作戦」

など、とんちきなエピソードがてんこ盛り。だいたい船戸与一にしたって、行き当たりばったりだ。いきなり「元麻薬王」に会いに行こう!無理か、ならいいや、別のことしよう!って。そりゃ高野氏じゃなくても言いたくなるわ「かけがえのない元麻薬王を大事にしよう」。

 

ミャンマーの政治事情、非常に勉強になりました。アウン=サン=スーチーさんて、そういう人なのね。教育・文化的特徴。ミャンマーの人はとても本読みが多いそうだ。小さな町にも必ず貸本屋があると。巨大ウリの上で読書をする少女の写真はとても素敵だ。高野氏はこういう説明をすると、とてもわかりやすく、興味ぶかい。学校の先生やっても良かったのではと思ったけど、ダメだ。多分、世界の変人と辺境の話しかしないもの。

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