柳井社長に恋でもしてるのか、というほどの執着で描かれる、ユニクロ潜入ルポ。少し感情的な感は否めないが、溢れる情熱を持って書かれているのはわかる。
前作「ユニクロ帝国の光と影」を書いたのが原因で、決算発表会見への出席を断られた著者。
漫画家 弘兼憲史と柳井社長との対談で、ユニクロがブラック企業と呼ばれることに対してそれを否定をしながら、「うちの会社で働いてもらって、どういう企業なのかぜひ体験してほしい」と発言をしたことを逆手にとって(逆手というより順手か?)、3つもの店舗で潜入取材をしていく様は情熱に満ちている。
自分が調べたい事のためなら改名も厭わず(改名の章で高野秀行氏の「世にも奇妙なマラソン大会」での改名方法を用いたとの記載に思わず苦笑い)。
実際の仕事では、サービス残業の有無を調べるはずが、同僚や上司が必死に頑張っているのを見て、同情し一緒になって長時間働いたり。
探していた商品を提供された、顧客の喜ぶ顔を見て、「接客業も悪くないな」と思ったり。著者は、ユニクロでの仕事そのものを、それなりに楽しんだようだ。
以前、北野唯我氏のブログで読んだ、天才と秀才と凡才のジレンマを思い出した。
一握りしかいない天才は、秀才に興味がなく、凡才に理解してほしいと思い。
天才よりは多く、凡才よりは少ない秀才は、天才に妬みと憧れの相反する感情を持ちながら、凡才を心の中で馬鹿にし。
数多い凡才は、秀才を天才だと勘違いし、理解できない天才を排斥しようとする。というような話だった。この論法だと柳井氏は天才なんだろうか。
直近のファーストリテイリングの業績は、単月売上高が過去最高だったり、海外事業も含めて好調な様子。
高齢社会で労働人口が減って、労働力の取り合いになっているはずなのに、日本では、いつまでもサービス残業やブラック企業、賃金が上がらないという話題が尽きない。
今時、山本五十六のように「やってみせ、言って聞かせて、、、」の人間育成が通じるスピードの社会ではないのはわかる。
しかし、少ない分母の中で、良い人と仕事がしたいと思ったら、それなりに条件良くしないと、人は来ないのではと思うが、やはり凡才の自分には、天才や秀才の考えは、しれないままなのであった。