人間失格風味、八つ墓村って感じですかね。実際に起きた「河内十人斬り」を題材にした町田康によるフィクション。つ、つかれた。
事件起こすまでの熊太郎の描写、ちょっと、いくらなんでも長すぎやしませんかね。父母から「かしこい。えらい。」と褒められて育つ熊太郎。外に出ると色々上手くいかなくて、ほめてくれる親はレベルが低いんじゃないかと勝手に見下ろすようになる。
少し大きくなるとハッタリで喧嘩に勝てるようになり、仲間みたいなものが出来るが、あくまでもハッタリかましてるだけなので友達ではない様子。
も少し大きくなると、仕事もせずに、酒と博打と女にハマる。しかも博打弱いのかよ!そんなことばかりしていると、悪い人間が寄ってきて、未来の事件につながるダメな人間関係のいっちょあがり。親御さん、教育のせいもあるとはいえ、本当にお気の毒。
思弁的で身体動かすより、まず頭で考えすぎちゃうタイプ。失敗するのが嫌すぎて、他者から見ると奇行に見える行動に走る。いや〜盛大にこじらせてるよね。どうしたらそんな遠いところまで行けたのか。
町田康はどうかしてる人間描かせると天下一品だな。普段の心理描写とかは、いっそ小学生の作文かってくらい稚拙な感じを装いながら、一歩踏み外した人間のわけのわからない行動や言動がすごいリアル。それでも、結構、熊太郎に対して好意的に描かれてるし、独特のユーモアでプッと笑える箇所もある。
しかし、あのおかしな兄弟のシーンは、熊太郎の妄想癖が幼い頃からある程度あったって意味なのか?イマイチ意味合いがわからなかったのだが。
この手の自意識が過剰で、自分は努力しない阿呆が起こす事件。昨今でも時々起きてやりきれない気持ちになる。救いなんて求められるような話じゃないのはわかってるけど、それでも弥五郎みたいな仲間だっていたじゃんよ。進む方向が違えば別の未来だってあったんじゃないの。
「あかんかった」じゃないよ。アンタが「あかんようにした」。やはりそうとしか思えない。
この事件を元にして「河内音頭」が出来たって話だけが、それでも生きていく人間の強さを表現しててたくましいなと。そのたくましさの一部でも熊太郎にあったなら、、
今日のマツコの知らない世界に河内音頭が!河内音頭てのはバリエーションがあるものなのね。