児童文学+アウトブレイク。そのこころは、両方とも今は小さいけれど、これから世界に出ていくよと。いや、後者にはあまり出ていかないでほしいわけだが。
児童文学とは、12歳くらいまでの第二次性徴まっさかりくらいの少年少女が読むのを念頭においたものとされている。
この何かにつけ多感な人生の季節に、こんなに善良な子どもいるか?と思うが「清」は子供達の中にあり「濁」は外の世界にあるとするなら主人公のキャラクターと泥というタイトルはピッタリだ。
主人公の少女タマヤ・ディルワディは、ペンシルベニア州ヒースクリフにある私立ウッドリッジアカデミーに通う5年生だ。両親は離婚し、母親と共に暮らしている。いわゆる聞き分けの良い、自己主張の強くない、賢い「いい子ちゃん」である。
ウッドリッジアカデミーの制服には「美徳と勇気」という文字が刺繍され、良き市民を育てることを方針としている。
学校では十の美徳を暗記させられたりする。
博愛、清廉、勇敢、慈愛、気品、謙虚、誠実、忍耐、冷静、自制
あるとき幼なじみのマーシャルとの帰り道、いじめっ子のチャドを避けるために、いつも通らない森の中に足を踏み入れてしまったために二人は恐ろしいものと出会ってしまう。
伝染病に対するこの本能的な恐怖は生き物として備わっているものなのか。内容は難しくないので、30分くらいで一気に半分近く読み進められる。というよりも先が気になって止められなかったのだ。
タマヤは十の美徳を地でいく善良さでもって、訪れる恐怖に立ち向かっていく。善良さが災いを呼んでしまっていることもあるし、解決のための救いになっていることもある。
いじめっ子のチャドの家庭環境による不安定さ。幼なじみのマーシャルの思春期特有の複雑さ。しかし彼らは本当の危機が訪れた時に、自己を投げうって守るべきものに助けようとする。
人間が皆こうであれば起こらない諍いもあるだろうが、私は薄汚れた大人なので、本当に困った時こそ嫌な部分があらわになったりもするよねと、はすから眺めて読み進め、後半はちょっと失速。
たまには心を洗わないと心のアクが溜まっていきますからね。美徳が10個は無理だが2~3個くらいは心に抱えて生きていきたいものだと思いながら読了。