間違う力 オンリーワンになるための10か条

 

 

 

「オンリーワンになる方法について本を書いてほしい」と言われて、困った著者が編集者に相談すると、「高野さんの本は、文章がどうのとか構成がどうのという以前に、『初手から間違っている』のが特徴です。」と評される。流石、編集者、私がずっと感じていたことを、実に的確に言ってくれた。

 

気がつけば、この人の本を結構読んでいる。別に研究者ではないのに世界各国の納豆を食べ歩いたり。たいしてマラソン経験もないのに、サハラ砂漠でフルマラソンしたり。未読の本では、幻の生き物とか探しているらしい。

 

何を考えてそんなことをするのかと思っていたが、こんなことを思っていたらしい。

 

いくつか抜粋すると、
「他人の非常識な言い分を聞く」
「怪しい人にはついていく」
「楽をするためには努力を惜しまない」

 

「他人の非常識な言い分を聞く」
先般、人に聞いた話で、その店が信頼できて、ある程度調理場の人とコミュニケーションを取れるのであれば、お任せで料理頼んだ方が、自分の好みに左右されない新しい出会いがあって良いという意見があった。

 

それと似ている話だ。非常識かどうかはともかく、新しい知見を得るために自分でテーマを決めるのではなく、人にリクエストを募り、自分では選ばない場所や探し物をすることで、思いがけない発見や驚くような出来事に出会うことができる。好きなことだけやってれば楽しい、という訳ではないのだな。

 

「怪しい人にはついていく」
著者は、文字通りホイホイ怪しい人に着いていって、案の定危険な目にもあっているので、これは万人に出来る方法では明らかにない。

 

しかし、偶然着いていった人が、ミャンマーの独立運動の要人で、それまで誰もが入ることが難しいと言われた地域で、「住み込み式ケシ栽培」の許可を得たりして、そのことを書いた本がそれなりに評価されたりしている。

 

「楽をするためには努力を惜しまない」
これは私の敬愛(笑)する漫画家の伊藤理佐が言っていた「ズルするために一生懸命」と少し似ているかもしれない。

 

学校での勉強で、英単語を大量に暗記するのがイヤだから、教科書から使用頻度が高い単語を正の字で数え、ランキングをつけ、10個だけ覚える。

 

それは結局、教科書を熟読してすることになるし、覚えた単語は10個から外していくので、結局どんどん覚えた単語は増えていく。

 

実は決して楽な方法ではないと思うが、本人はこんなに楽しているのは自分だけだと思って、まったく苦ではなく面白がってやっていたらしい。

 

結局、自分のやりたいことを楽してやっていくためには、自分のやりたいことだけをやっていかない方がいいという、禅問答のような結論に至るように思う。

 

「嘘つきのクレタ人」のパラドックスが文中で出てくるが、それに対しての見事な回答になっているのではないだろうか。

 

関係ないが、装丁とサブタイルトルがイマイチだなと思っていたら、その後新書で出直されてるのね。絶対こっちの方がいい。

 

 

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