11月に去りし者

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結局、ケネディ大統領ってなんで暗殺されたんだっけと今更の疑問抱き、自分はアホなのかと思った。反リベラル派によるものだとかCIAが主謀だとか玉石混交の説があまたある中、それが分からないからいまだに人々の関心を引くんじゃないか。現在まさに超保守派からリベラル派へアメリカ大統領が交代したところであるが、JFK暗殺を絡ませたMWA賞受賞作家のクライムノベルである。

 

なぜ絡めるものがケネディ大統領暗殺なのか。確かに陰謀論が囁かれスケールを広げやすいテーマである。とはいえマフィアが主な登場人物たちであるなら必ずしもそれでなくてもいいよなあと思いながら読んでいたが、これアレだもう1人の主人公である彼女のための舞台装置だな。

 

マフィアのフィクサーであったギドリーは自分の関わった案件がJFK暗殺に関わるものであり、口封じのために自分の命が狙われていることに気がつき逃亡することになる。もう1人の主人公は田舎町で予め決められた人生を生きていた子持ちの主婦 シャーロット。自身の仕事は思うようにならず、夫は徐々にアルコールに溺れていく。彼女は自分には他の生き方があるのではないかと子どもと持病持ちの犬を連れて日常から逃亡することにした。

 

ベースになるギドリーの逃亡劇が面白い。腹に一物抱えた人物ばかりとのやり取りはスリルに溢れ、彼が有能さと人間的魅力で迫りくる危機から逃れる様子がベースとして巧みに描かれるからこそ、まったく違う舞台に立っているシャーロットの生き方が効いてくる。

 

人生を諦めていたようなシャーロットは、大統領暗殺のニュースを見た娘たちに大統領夫人はこれからどうやって生きていくの?と聞かれる。歴代の中でも最も有名で人気のある中の1人であるアメリカ大統領のファーストレディの立場を最も悲惨に失ったジャクリーン・ケネディ。娘に大統領夫人でなくなっても生きていくのだと答えるシャーロットは与えられた運命以外にも自らで選んだ自分らしい生きる道があるはずと信じることにする。

 

逃亡のためシャーロットと娘たちを利用するつもりで近づいたギドリーはやがて彼女と恋に落ちる。闇社会で人間を信頼していなかったギドリーと自立のために今までの人間関係を捨てるシャーロット。彼らが最後に選ぶ選択がそれまでの人生を反転させたようなものであるのが興味深かった。

 

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