しゃばけ

ずっと人気のシリーズなのは知っていたが、なんとなく手がつかなかった。通勤電車の中で、中高年のおじさんが何作目かを読んでいた。この年代の男性も好きなのかと意外に思い、読みたい本の中から優先順位を上げて読むことにした。

主人公の一太郎は薬種屋の、体の弱い跡取り息子。とある用を済ませたある晩、帰り道に人を刺した跡と思われる男と行き当たり、襲われそうになる。その時から、薬種屋の人間が連続して襲われる事件が発生する。

作者の畠中恵には、「しゃばけ」、「まんまこと」、「江戸時代」など多くの人気シリーズがある。ビジュアルデザイン系の学校出て、漫画がスタートの人か。キャラクターが立っているのはそういうところだろうか。

一太郎を守る二人の手代。犬神の佐助は背の高い偉丈夫。顔もゴツく大層力が強い。白沢は仁吉(にきち)と呼ばれ、切れ長の目に整った顔立ち。呉服屋の店先にでも置いておけば、反物の売り上げも上がろうかという色男。体の弱い一太郎は、いつもこの二人に過保護に守られ、少々辟易している。

父母も一太郎を心配し、箸より重いものはもたせず、飯を食べるだけで喜ばれる始末。「毎日毎日心配のしどうしで、いっそ、この子も、(早くに逝ってしまった)兄のところに行ってくれたら後が楽だと思ったことはないのかしら」などと、景気の悪いことを考える主人公。

ただ、弱いばっかりかというとそうでもない。秘密は頑固に心に抱え、知りたいことは幼なじみの和菓子屋の栄吉の力を借りて調べたり、お供も連れず自ら足を運んだりする強さもある。

時代物系ファンタジーは、人と人ならぬモノが共存して、ミステリー的課題を解明していくのが面白い。本作は佐助と仁吉だけでなく、付喪神の鈴彦姫。一太郎の家に住む屏風のぞき。小鬼の鳴家(やなり)。それぞれが一太郎のために力を合わせて事件解決をお手伝い。鳴家可愛いよ、鳴家。謎解きとしても、しっかりと伏線が回収され、満足です。

自分の体の弱さにうんざり気味の主人公。和菓子屋の跡取り息子なのに、菓子作りの腕が上がらない栄吉。ままならないながらも、家を放り出すわけにはいかないから仕方ないねと、どこかあっけらなんとしながら、周りを大切に思っている様子。この子たち、いい子だねとほほえましく見てしまう。

当初は弱々しくて、人に守られるばかりだった一太郎。綺麗事ばかりではない家の数々の秘密を知り、事件の真相に近づくにつれて、強くなり成長する。なるほど!これは大人も子供も男も女も楽しめますね。さっさと読んでおけば良かった。これからの展開が楽しみだ。

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