おばちゃんたちのいるところ

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先日、女友達と話していて「叩き上げ」と言うけど私たちの人生でも叩かれていた時期ってあったよねという話になったのである。まあ、それぞれに大変な時期もあったが、今はそのおかげでわりと楽しいよねというような趣旨の話だったのだが。

 

考えてみると女性というのは、どの人も女性という業界の「叩き上げ」である。勉強、恋愛、美容、仕事、結婚、出産、子育て、健康、介護、趣味。どの要素もするとしないとでは大きく人生航路が変わる。そして複数を同時にこなすのは、かなり骨の折れる仕事である。

 

とはいえ状況によっては否応なく複数をこなさなくてはならないわけで、そこでバンバン叩かれ鍛えられると、立派な「叩き上げのおばちゃん」が完成するのである。

 

モーリス・センダックの名作絵本『かいじゅうたちのいるところ』をもじって「おばちゃんたちのいるところ」とは結構なタイトルじゃないか。

 

おばちゃんたちはかいじゅう扱いか!おしも押されぬおばちゃん世代の自分としては若干憤りながら、どこか自分の生き方に罪悪感を持っていそうな女性が書く自虐ネタ系の読み物なのかと思って読んだのである(それはそれで嫌いではないが)。

 

ところがどっこい、この本に出てくるおばちゃんたちは確かに人とかいじゅうの間くらいの存在だった。

 

私の浅慮な予想による自虐ネタ系本などでなく、歌舞伎や落語、戯曲や昔話をモチーフに繰り広げられる現実とファンタジーの混合のようなストーリーは、わりとさらりとした読み心地であるが、元ネタを知っている人は二重に楽しめるというおトク仕様になっている。

 

ちなみに私は全部読み終わってから奥付読んで初めて気がついて慌てて読み直した。浅い!浅すぎるぞ私の読書。

 

「叩き上げ」の女性であるおばちゃんたちは死してなおプロの女性である。叩き上げられた先にこんな楽しそうな世界が待っているなら多少叩かれてもいいかな。そう思わせてくれる文化的おばちゃん説話集だった。

 

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