すべて忘れて生きていく

相撲は好きですか?北大路公子さんは相撲が大好きだ。

「相撲のための完璧な一日」を夢見て、朝の八時や九時から、延々と相撲を見たいと熱望し、そのための苦労なら(多少は)惜しまず、弁当を作ったり、家族との無用なチャンネル争いを避けるため小遣いと言う名の賄賂をおくり人払いをし、朝の八時半からビールをプシュっと開けてだらだらと見るという妄想をするくらいに好きだ。

あまつさえ、好きだ好きだという相撲取りたちを、相撲取りの湧く泉でもあるのかと思うほど多いと言ったり、相撲取りは人間なのに和菓子に似ていると言ったり。

美しさの表現として人間を饅頭や、柏餅や大福に例えるというのはいかがなものかと思いながらも、非常に絶妙の表現であることは否否めず、やはりビールばかり飲んでいても作家。そこは独特の言語感覚を持ち合わせているのだなと、改めてこの人を好きになる次第なのである。

北大路公子さんはがあちらこちらで書き散らかした、日常エッセイと相撲に関する溢れ出る愛と、書評、創作の奇譚集を、編集さんとファンの力でもって集めてまとめた1冊(ご本人には自分の作品を保存しておくという機能は付いていない様子)。

今までで一番好き。この人生の哀愁でも表現しているのかと思いきや、単に「だって忘れちゃうんだもの。仕方ないじゃない」と開き直っているタイトルも含めて全部大好きです。

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