テスカトリポカ

テスカトリポカ
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「犬の力」を読んだときにメキシコって国とは絶対喧嘩したくないと思っていたがよく考えてみれば我が国の歴史にしたってなかなか血生臭く残酷な話は多いわけで、おまけに死者の日と同じように死んだ人が帰ってくるお盆というお祭りまである。

 

結構いい勝負になるかどうかはともかく直木賞、山本周五郎賞受賞作はメキシコの麻薬カルテルのボスがはるばる日本まで来て大暴れする話であった。頼むからやめてください。

 

ちなみに名前がどうにも正しく覚えられずに「テスカポリトカ」とか言っていた。正しくは「テスカトリポカ」。現在のメキシコ辺りの古代アステカの神様のお名前なので間違えたら大変怒られて生贄にされてしまうかもしれない。

 

アステカの神さんおっかなすぎるとちびる思いで読んでいたがこれ怖いのは例によって人間だわ。しかしどうだろうねアステカの神さんにしたってこんなに生贄いるかい?「ちょ!待て人間。わしゃそれいらん!!」とか言ってませんかね。

 

闇の商売に於いては「あるのは競争でなく独占」だけだそうなのでどんな手を使ってもマーケットを掌握したものが勝ちであるとはいえどうしたらこんな残酷で極悪非道なこと思いつくのか。頼むからウチとこの土地でやらないで!!

 

液体窒素を使った拷問でアレをナニしたり、いっそ牧歌的にすら見える日本のヤクザとの抗争で殺傷能力の高すぎる銃火器使ったり。過剰ですよ!オーバーキルですよ!!

 

そして費用対効果についてどう考えているのか聞いてみたくなる積極的な経営方針である。違法臓器移植をするために豪華客船に最新医療設備を搭載する投資に対してどれほどの期間で資金回収するつもりだったのか小一時間聞いてみたい。

 

とはいえメキシコで麻薬の製造や物流のシステムを築き上げて莫大な利益を上げていたカルテルの幹部だったようだから採算が取れる見込みがあったのだろうか。どこぞの国の指導者に教えてやりたい初期投資に関する意識の高さである。

 

アステカ文明についてちょっとインターネットで調べてみると中学生くらいが喜びそうな残酷で神がかりなエピソードがザクザクである。ジョジョの奇妙な冒険ってアステカ文明が原点なのか。どうりですぐに顔の皮とかがペロ〜ンとなると思ったよ。

 

たまたま同じ時期にゴールデンカムイの最新刊を読んでいたが、この漫画も人皮人皮ってみんなそんなに皮が好きかね。ご多分に漏れず自分もそんな本を読む機会が多いわけで天に唾吐くようなツッコミではあるのだが。

 

メキシコのカルテル同士の抗争で敗れたバルミロ・カサソラは、再び力を手に入れメキシコに帰り復讐をするためにジャカルタに潜伏中、日本人の臓器ブローカーと出会う。新たな臓器ビジネスを立ち上げるために日本の川崎に向かった二人。参考図書に「ルポ川崎」があったのが興味深い。川崎は移民の人が多いのでこのような濃すぎる事情を持った外国人がいても目立ちにくいということなのだろうか。

 

メキシコから亡命するかのように逃げてきた母親とヤクザの間に生まれ川崎で生まれ育った土方コシモは家庭・教育環境に恵まれなかったが体躯には恵まれた。酷い理由で父母を喪くし少年刑務所に入った後、手先の器用さを見込まれバルミロたちの組織に所属するナイフ職人のパブロに弟子し、その後力の強さがバレて組織の殺し屋部隊にスカウトされる。実際の父母に恵まれなかった少年は組織の中で父とも言える人物二人と出会うが。

 

キーワードは心臓と家族である。バルミロと祖母・父・コシモとの関係、コシモの父母と仮の父とも言える二人との関係。心臓は神に捧げる生贄なのか、ブラックマーケットでまばゆく輝く宝か。

 

同じ多神教でもトイレだの台所だのにもいるという日本の神さんとはだいぶ面持ちの違うアステカの神様たち。非常に興味深くはあるが遠くにありてほしいと思うばかりである。

 

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