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煮え切らない主人公だな。思い切りの良さとは程遠く、もにゃもにゃブスブス心の中に鬱憤を抱えて自分ではなかなかそれを晴らす方法を見つけられない。

 

家族に逃げられてもそれを止める甲斐性もなく、周りからは渋い「ゴルゴ13」みたいとか言われてるけど、実際はダメなときの「のび太」みたいなグズグズくんじゃないか?

 

主人公の青瀬は一級建築士。バブル期にはイケイケどんどんで大活躍だったが、バブル崩壊とともに仕事は激減し、家庭もうまくいかなくなり妻とは離婚。娘とたまの面会で会うのが数少ない楽しみ。

 

停滞期を経て友人の設計事務所で投げやりに仕事をしていたが、あるとき施主の一家から3000万の予算で信濃追分にあなたの住みたい家を作ってくれと言われる。導かれるように作った家はそれまで設計してきたコンクリート造りの建物でなく、別れた妻の憧れた木の家だった。

 

出来上がった家は世間的には高く評価されるが、青瀬の技術を評価して依頼したという施主一家はその後まったく連絡を寄こさず、家には住んでいない様子だった。なぜ高い予算で縁もゆかりもない青瀬に唐突に設計を依頼してきたのか。一家はどこに消えたのか。

 

自らの設計した住人のいない家を訪ねた青瀬はそこでドイツ人の建築家タウトのものと思われる椅子を見つける。何もない部屋に置かれた椅子の意味とは。

 

別れた奥さんに未練たらたら。子どもにふがいない離婚の理由を知られたらどうしようと動揺。やっと代表作と言える仕事が出来たと思ったら施主は能力を評価してくれたわけじゃないみたいでしょんぼり。建築士なのに自分が住んでいるところには愛着を持てず。職場に呼んでくれた友人にも今ひとつ心をひらけない。

 

難儀ですなあ。なんかもうちょっとスネ夫みたいな要領の良さとかジャイアンみたいな強引さとかあってもいいんじゃないの。でもそういう風にしか生きられないんじゃ仕方ないね。

 

幼い頃、父親のダム建築の仕事の関係で全国を転々としていた青瀬が見つけたかったのは、定住できる家だったのか、ともに暮らす家族だったのか。

 

「死んだらどこに帰りたい?」同僚に問いかける青瀬。「自分が生み出した自分の魂が乗り移った家に帰りたい」と話す同僚。これは家の話なのかそれとも家族の暗喩か。

 

ひとりで生きる勇気もなく、家族と生きていく覚悟もなかった煮え切らない男、もとい煮え切るのに時間のかかる男は周囲の人間の影響でやっと目が覚める。好意的に考えればひとりでは生きていけず、なんだかんだで人に頼ることのできる青瀬は人間らしい人物なのかもしれない。

 

が、しかし私は主人公よりも恋敵だった彼の方が好きだったけどね。敵対してもいいものはいいと言える潔さがあるしアグレッシブな様子で。奥さん、青瀬氏のどういうところが良かったんですかね?

 

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