パンク侍、斬られて候

「辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦」を読んでいたら、町田康の「ギケイキ」が出てきた。読みたい本登録していたことを思い出した。町田康は昔「くっすん大黒」読んで、独特の世界観にハマりきれず途中リタイア。図書館で偶然本書を見つけて、本好きの人々にも評判が良いので、久しぶりに読むことにした。

 

勿体無いことしてたな。実に面白い‼︎

 

その場をとりつくろうためのあさはかな嘘。無意味な(本当にね)足の引っ張り合い。安易なインパクトに飛びつきすぐに踊る大衆。暗喩するために備えられたこの舞台。どんな脳みそしてると、こんな素晴らしく荒唐無稽で、馬鹿馬鹿しくてパンクな話を思いつくんだ町田康。

 

超人的剣客、掛十之進はフリーの牢人(浪人?)。腹ふり党を成敗しなけりゃならないとか言って、行き当たりばったりに馬鹿な武士を騙くらかして士官の身分を手に入れる。果たして腹ふり党を無事に討伐できるのか?!って、ちょっと何言ってるかわかんないです。と思って読み進めると、途中からグイグイと本作の求心力に吸いつけられる。

 

頭と要領の悪い長岡主馬。都合の悪いことがあるとすぐに気を失う幕暮孫兵衛。情緒不安定な密偵の江下レの魂次。藩のキレ者の重臣、内藤帯刀と大浦主膳。カリスマ宗教家の茶山半郎方。それから猿たち。こんな個性的な登場人物たちが一つの鍋でグツグツグツグツ煮立てられて、まったく予想のつかない方向にストーリーは進む。

 

少々ネタバレるが、これが本作をもっとも適切に表すセリフだ。しかも、これ言ったのは、まさかのあの登場人物という、、
「何万の猿と何万の人間がこんな嘘臭い河原で無意味に争っているということ。それらの根源にかかわる問題をきちんと解決しないとどうにもならない。でもあいつらは当面の問題の処理ばかりに終始しているんだ!」

 

声出して笑いそうなほどの馬鹿たちが巻き起こす乱痴気騒ぎにいつのまにか目が離せなくなる。しかも読み終わった瞬間に、最初のページに戻ってグリグリ飲み返したくなる。これはハマるわ。映画も見たくなった。私の中では掛十之進は菅田将暉なのだけど、綾野剛なのね。何年越しかの町田康、これはしばらく楽しめそうだ。

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です