人質カノン

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最近アニメやドラマ、植物など読書の他に気になる事が多い。かといって体力は年齢に正比例して衰える一方で、あれもこれもと欲張るには集中力が足りない。

 

文字を読みたくないわけではない。ただ読むのに使う能力がうまく機能していないのを感じる。そうだ!ちょっと読むためのチューニングしようと、昔っからさんざ読んでいる宮部みゆきさんの短編集を読むことにした。恐らく15年以上前に読んだきりで中身をさっぱり思い出せないものを選んだ。

 

読み出してみると驚いたことに結構内容を覚えていた。宮部さんの作品の中ではわりと平和な部類の方の作品である。つまりパンチはそれほど強くない。「理由」や「模倣犯」、「三島屋変調百物語シリーズ」などに比べたら、まったくもってさらりさらりとしていてどんでん返しもないし流れる毒も薄い。しかしそれでも内容を忘れていないというのはなぜなのか。

 

宮部みゆきさんの文章構成を眺めていると、かなり細かく句読点がふられていることに気がつく。そこまで区切るんですねというほどふられているのだが、読んでいると非常に読みやすく理解しやすい。短い文章と文節で数珠を繋ぐように長く長くつないでお得意の宮部みゆきワールドが築かれていくのである。

 

最近SNSなどでいわゆる文章のプロでない人が文字を綴る機会が増えている。かくいう自分も拙い読書ブログなどをしているわけだが。SNSやwebサイトで書かれる文章は句読点を細かく入れるのにあまり向いていない。タブレットやスマートフォンの限られた画面で見るからなのか、細かく区切ることでかえって読みづらくなることがある。

 

多くの作品を緩急自在に書き続けヒット作を連発する宮部みゆきと一般人の書いた文章は比べるべくもないし、住む世界も求められるスタイルも違うので本来比較対象にはならない。けれども私がニヤニヤしながら見ているTwitterのつぶやきの切れ味がいかに鋭くとも15年後にその呟きを思い出すことは殆どないだろうと思うと、文章のプロの凄みというものをまざまざと思い知る気がするのである。

 

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