怪物はささやく

  これは人の喪失についての物語。
  喪失は人に何をもたらすのか。今まで読んだ本の中で、これほど現実感を持って、喪失を描いた作品があっただろうか。しかも児童書のジャンルで。

  コナーは重病を患い闘病中の母親と二人で暮らしている。父親は母親と離婚して新しい家庭を持ち、離れて暮らす。母の闘病でちょくちょく手伝いに来ることになった祖母とは、彼女の横柄なものの言い方でソリが合わない。学校では重病の母親をもつかわいそうな子供として扱われ、ずっと苛立ちを止めることができない日々だ。

  コナーは最近悪夢を見るようになった。それはとても恐ろしくコナーを苛む。ある夜、コナーのもとに怪物がやってくる。自分の悪夢が具現化したのかと驚くコナーに、怪物は自分を呼んだのはコナーだと言う。怪物はコナーに三つの話を語るという。そしてそれが終わったらコナーが怪物に四つ目の話を語れというのだ。

  怪物が話す、嘘と信念と無関心についての三つの話。それを聞いた後、コナーは四つ目の話を語るのか。

  強い喪失は言葉だけでは表現出来ない。傷ついていなくても実際に身体に苦痛を与え、苛立ち・腹を立てさせ、暴力を誘い周囲も本人をも破壊する。それほど強い出来事なのだ。それなのにそこから目を背け、口を閉ざしていると、言えない言葉、思ってはいけない感情が身のうちにこごり、くすぶっていつしか燃え上がりその身を焼き尽くす。

  心臓が破けるかと思った。これは今年のベスト5に入る。先日読んだボグ・チャイルドの作者、シヴォーン・ダウド原案、パトリック・ネス著作。惜しまれて早逝したシヴォーンの原案がどんなものだったのか、それをネスがどうやって本作に仕上げたのか非常に気になる。

  煽り文句によくある「喪失と再生の物語」なんて簡単に言ってはいけない。喪失だけで人はこんなにも恐ろしく美しい物語を紡ぎだす。とても良いものを読んだ。レビュー書こうと調べていたら映画化されているらしい。予告を見たらなかなか良さそうだ。しかし未読の方にぜひ本を先に、ご一読いただきたい。

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