多額の借金の話が出てくるノンフィクションを読んで、ふと思い出し再読。作中でもそんな表現が出てくるけど、中の見えない箱を、大したものは入ってないだろうと思って手を入れてまさぐったら、とてもおぞましいものに触れてしまったような感覚。
宮部みゆきは最近の現代ものだと、身の内に毒を持って、周りを恐怖に陥れる困った人間が恐怖の対象になる事が多いように思う。
しかし、本作ではバブル崩壊後の、多重債務や闇金融が招く、悲劇や事件が恐ろしい。経済小説の毛色も持った、緻密で巧妙な演出のミステリーだ。
警察を休職中の本間は、自分の過去の全てを捨てて逃げる女性の、狂走とも言うべき足跡を辿って、徐々にその正体に迫っていく。
近づくほど恐ろしさに哀しさが重なっていく感覚は、今読んでも色あせない。直木賞取り損なったってのが信じられない。当時の審査員は、その後、ほぞを噛んだのではないかしら。
しかし随分長い間、現代もの、時代もの、ファンタジー、様々なジャンル・趣向で本を書き続ける人だ。財布が語るミステリーなんてのもあったなあ。あれも面白かった。健康に気をつけて、今後も良質な作品を量産してほしい。
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