罪の名前

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これは面白い。そして上手い。良いモノを教えてもらった。初読みの作家さんである。元はBLものを書いていて人気の人であるらしい。本作ではその要素は主体ではないが所々で見え隠れしているが普段読まない方が嫌悪感を感じるほどではないのではないか。嫌悪感を感じるとしたらダントツであっちの方だろう。

 

BL系と言われてみると、本作はいわゆるイヤミス的な要素があるにもかかわらず、粘着質でなく硬質で無機質で、どこか人ごとのような雰囲気を持っているのが腹落ちするような気もする(いや、そのジャンルもいろいろ種類はあるだろうとは思うが)

 

なにせ読みやすい、しかし適度な重さを持っている。文章が持つ何とも言えない色気でその辺りのバランスを取っているのだろうか。

 

各章に登場する最近でいうところのサイコパスたちは身近にいそうである。ここまででなくとも同じ要素を持っている人とは生きていると時々いきあうことがある。出来るだけお近づきになりたくない人種である。

 

しかしこの本の中に出てくる登場人物たちのように、そういった人には妙に人を惹きつける魅力がある。登場人物たちが彼らに本能的な違和感を感じても、それを上回る魅力に惹きつけられてしまう。そのことが恐ろしい。

 

事態をコントロールしたいサイコパスたちの話であるように思う。

「罪と罰」ではフェティシズムと罪悪感の欠如による病的な嘘で。

「消える」では誰にも許されない想いに大義名分が与えられ、望みが叶えられることになってしまったがゆえに。

「ミーナ」もまた病的な嘘であるがスケールが非常に矮小で俗っぽくて、いわゆる女性の嫌なところを煮詰めたようであるが、先に述べた無機質さのおかげかそれほどの嫌悪感を感じない。

なによりも「虫食い」だ。お前のものは俺のものどころじゃない。お前のすべては俺自身という勢いである。「食い」の字が「喰い」でないところが逆に怖い。食べるのはあくまで把握するための手段であり、飲み下して自分自身にするのが目的という。グロテスクなホラーでなく自我ごと飲み込まれそうな恐怖を感じる。

 

というわけで自覚的であるという意味で怖いのは「虫食い」「消える」「罪と罰」「ミーナ」の順だな。

 

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