行こう、どこにもなかった方法で

あの洒落てる型で、パンがとても美味しく焼けるらしくて、ちょっと高価なので有名なトースター、バルミューダの代表 寺尾玄の自伝。

 

比較的裕福な家庭育ちで、ちょっと無茶をしてもいつも明るく生活を楽しもうとした母親。

父親は働くことにストイックでありながら、ヘミングウェイの「キリマンジャロの雪」や「かもめのジョナサン」などを息子に読ませ、人はなぜ生きているのかについて、幼いころから考えさせるような人であったらしい。

マルコム・グラッドウェルの「天才!」にあったが、どんなに能力があっても人は環境に恵まれないとその能力を発揮できないそうだ。

その意味で著者は環境に恵まれている。著者の小学4年生まで、母親は勉強を教えながら子供をよく褒めて、勉強することに対する抵抗をなくし、貧しくても海外旅行に子供を連れて行って見聞を広めた。

父親は本や映画、自分の生き方を通じて、なんのために生きるのかを自分に問える人間を育てた。

高校を中退した後、地中海沿いを放浪した著者は、日本に戻りミュージシャンを目指し、大手レーベルと契約するが、最終的には上手くいかず28歳で転職を余儀なくされる。

モノ作りの仕事を始めてからは、一心不乱の言葉がぴったりだ。出来ることはなんでも全部やってやるという、泥臭いやり方でモノを作り、売ってきたらしい。

モノ作りを始めてからも、著者には自分の利益や損得は度外視して、全力で応援してくれる支援者がついてきた。それは支援者の側で、著者の何かに感じるものがあったからなのだろうか。

本作を読んでいて思ったのは、商品について書いてあるページの少なさだ。なんならトースターのことはオマケくらいにしか載っていない 笑。

この人にとっては、今もまさに「途中」なのだろう。晩年の人でなく、全盛期、真っただ中の人が自伝を書くとこうなるのか。

ミュージシャンか詩人になりたかったという著者の感性で、作る電気機器。今後も「どこにもなかった」商品が出来ていくのだろう。

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