警察の刑事部と言えば、殺人・強盗・放火など凶悪犯罪を扱う捜査一課、組織犯罪や暴力団を取り締まる捜査四課などはドラマ見てるとよく出てくるのだけど、二課って何やってるところか覚えてなかった。知能犯扱うところで、汚職とか詐欺とかを扱うのね。本作を読んで納得、これは地味でドラマにしづらいわ。とか思ってたら、本作はWOWOWでドラマになってた。失礼しました!
汚職の「汚」の字のサンズイをとって、「サンズイ」と呼ばれる贈収賄事件を摘発する刑事たちは、「ナンバー」と呼ばれ、捜査二課の看板のような存在だそうだ。そして、もう一つ二課で重要とされていたのが情報係、通称「情報(そのままか笑)」と呼ばれる部隊だった。
本作は、この「情報」たちが調べ上げた情報を元に、「ナンバー」たちが取り調べを行った、実際に起きた総理官邸や外務省を舞台にした、未曾有の公金詐取事件を描いたノンフィクションだ。本作の被疑者の官僚が詐取したとされている金額はわかってるだけで、5億円以上。しかも、競走馬の購入・維持、不動産、複数回の結婚・離婚、複数人の愛人。公金横領の、お手本のような使い道だね。
刑事たちが調べるひとつひとつの事柄、ひとりひとりの捜査は決してそれひとつで事件解決の決定打になるほど強力なものではなく、総力戦で「石つぶて」を当てるようにして、少しずつ事件を立件に導く刑事たちの執念には、畏敬の念すら覚える。
こないだ官僚の本読んで、この人たちドMでドSだなと思ったけど、もうひとつ。官僚ってもしかしてアドレナリン中毒なんじゃなかろうか。ひるがえって、刑事ってのはワーカホリックだ。そう言えばフィクションの世界の刑事たちも、だいたい働き過ぎだ。
地味だし、儲からないし、正当に評価されることは少なそうだし、忙しすぎて家族?何それおいしいの?って感じだし、なんでこの人たち、こんなにこの仕事に打ち込めるんだろうと、最後まで、今ひとつピンとこないままだった。
しかし、そういう損得で動かない人たちが世の中にはいて、その人たちが守ってきたものは確かにあると感じられる重厚な内容だった。