AI vs. 教科書が読めない子どもたち

AIによってヒトの仕事の多くが奪われてしまうのではないかという最近の疑念について、著者は決して悲観的ではない。悲観しているのはAIに出来ない事が出来る人間が減っているのではないかということだ。


本書の前半は、誤解の多いAIとAI技術の違い、AIに出来ること、そのために人間がしなければいけないエライこと大変そうな下準備なんかについて書かれている。AIは結局、「計算機」だから数学で表現できないことは出来ない。数学は論理、確率、統計ができることの全て。だから、シンギュラリティ(技術的特異点)とかいう、「AIが人間の力を全く借りずに、自分自身より能力の高いAIを生み出すこと」は出来ないんだと。ふーん、あの映画はそれを表現したものなのか。

どうもヒトはヒトを超えた何かに滅ぼされたい願望があるよね。ドMなのか、すぐそういう映画や本を作っちゃう。でも、ヒトを超えた機械でなくとも、今のところMARCHの大学に入れるくらいの能力にまで発達した「計算機」によって簡単にやられちゃうかもよと著者は強い危機感を抱く。なぜなら、著者の作った「東ロボくん」が苦手な読解力について、どっこいどっこいのレベルの学生たちが高水準な学校の中にもかなりの割合でいたからだ。

読解力のない人間が増えているのではという話。著者の行った全国2万5000人を対象にした基礎的読解力テスト(リーディングスキルテストRST)。「係り受け」「照応」「同義文判定」「推論」「イメージ同定」「具体的例同定」などのAIに読解力をつけさせるための課題を利用して作られたこのテストは、受験者の読解力をつまびらかにする。

え、そんなに悪いの?!と結果を見た著者は引くが、文章を読み飛ばすことのある自分はこんなもんじゃないのと思わなくもなかったり。そうか、私が勉強できなかったのは、ちゃんと教科書と問題文を読めてなかったからなのか。確かに教科書1回読んで理解して、たいして勉強してなさそうなのにいい点取る人っていたよね。あの人たちは読解力が優れてたってことなのか。人が10回読まないと理解しないものを1回で理解する。うーん、低燃費なエコカーみたいだな。

著者は言う。教育は国家百年の計と言われる。もっと科学的な設計が必要だ。RSTは教育ビッグデータの上で、確率と統計を駆使して結論を導き、読解力が落ち教科書の読めない子どもたちがいることを検証した。
今までそういうこと調べられてなかったのか。そりゃマズイでしょ。

読解力を上げるにはどうしたらいいのか。実は地道な教育現場の努力が功をそうするようだ。今後AI技術が必須になるこの世界で、一朝一夕には成長しない読解力こそが、AIに取って代わられないための人間の武器になるはずだと著者は言う。AIに仕事を取られないためにも、人間らしい頭の使い方していきましょというお話。あ、著者の調査によれば読書をするかしないかは読解力にはたいして影響がなかったらしい。道理でね。

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