ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

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このイカしたタイトル。著者の中学生の息子くんがノートに走り書きした一節だというのだから恐れ入る。

 

最近割と話題のこの本。タイトルと装丁で非常にカジュアルに読みやすい感じでイギリスの教育や子どもたちについて書かれたノンフィクションである。とても面白かったし、格好良かったし、教育やダイバーシティについて考えさせられた。

 

黙っていても苦痛な時はわかってもらえる、影の努力を誰かがそっと見ていてくれる、そんな希望的観測や、まだ見ぬ星明子を待つようなことはもうやめた方がいいのではないか。

 

自分もこの国の人間なので行間の侘び寂びがあるというのは非常にわかるし、ある意味で美しいとも思うのだが、もはやそれは芸術的な文化であり実生活とは切り分けて考えた方が良いのではないかと最近思うのである。

 

いろいろな国、人種、民族、セクシャリティ、貧富の人がともに生きていくためには、自分の思いを表に出して人に伝え、人の表情を見てその人の感情を想像することが必要なのではないか。そのためにどうすればいいのか。

 

イギリスでは教育機関の多くで演劇の授業があるそうだ。喜怒哀楽の表情の人の写真を見てこの人はどういう気持ちだと思う?と想像を促し、どんな表情をしたらどんな風に見えるのかを学ぶのだそうだ。

 

自己表現の手段として演劇を学ぶ。非常に興味深い。辛いことがあっても表に出さず、我慢するのをどこかで美徳と思っている日本人こそ取り入れるべき教育法なのではと思う。

 

ましてやこれから日本にもますます外国人が増え、文化的多様性はいや増していくだろうに、黙っていてもわかってもらえると思うのは、もはやコミュニケーションにおける怠慢なのではないか。

 

数学や歴史を学ぶのと同様に、人とのコミュニケーションにも学習は必要だ。いくら立派な志を持っていても、人に伝えることが出来なければそれはないのと変わらない。

 

というか、もう、めんどくさいのである。言葉の裏を読んだり、この人ああ言ってるけど実際はどうなんだろうと不毛なモヤモヤを抱えたり。そんな風に生きていくのって非効率的で不合理で不健康じゃない?

 

著者の暮らすイギリスは今でも歴然と階級社会であり、ブレグジット、貧困など多くの課題がある。いや日本の多くの地域より問題はよりシリアスであるようにも見える。

 

親子ともが満足な衣食住に必要な経済力がなかったり、大人の影響か人種・民族に対する差別意識を持つ子どもたちもいる。難しい。衣食住がままならない人が結構いるって教育以前の問題である。貧しいことはそのまま精神の荒廃を呼ぶこともある。

 

様々な文化・経済背景を持つ人々が混在して暮らす町では、踏んではいけない地雷もたくさん埋まっている。どんなに注意しても知らず知らず礼を逸してしまうことはある。面倒くさくても他人のことを理解するための能力は現代では必須なのだ。

 

エンパシーとシンパシーの話が興味深かった。エンパシーとは他人の感情や経験を理解する「能力」。シンパシーとは他人への「感情や行為や理解」。シンパシーはトレーニングして身につけるは難しそうだが、エンパシーは訓練すればある程度は身につくのではないか。

 

息子くんのが学校で受けた授業で「エンパシーとは何か?」という問いに対しての答えがふるっている。「他人の靴を履いてみること」。英語の定型表現で他人の立場に立ってみることだそうだ。

 

難しい問題は避けて通れない以上、教育で荒波を泳いでいくための技術を身につけようゼ!という前向きな姿勢。大好きである。イギリスのボランティアに関する環境、子供たちの柔軟性も非常に興味深い良本だった。

 

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