そうなんだよ。ウイルスさんの立場に立ってみたって、結局取りつく先がすぐにいなくなっちゃあ自分たちの存続に関わるわけだからさ。そのへんコロナさん側にも、もう少し考えて変異してほしいんだよね。お互いのウィンウィンの道に進むような形でさ。
リアルタイムで新型コロナウイルスとの戦いの真っ最中であるワタクシどもホモサピとしては勉強になるのかそうでないのかよくわからないけれど、とりあえず面白いSFである。
1969年の大ヒットSF。意外と古かったが特に違和感を感じない。むしろ当時読んだら進みすぎてて、ちょっと何言ってんのかよくわかんないという感じだったのではないだろうか(生まれてないけど)。
ファンも多いらしく読もうとしたら本読みの人たちからなかなかのリアクションがあった。聞いたことある作家だなと思ったらジェラシックパーク書いたりドラマERの製作総指揮したりした人だった。売れっ子さんだったんだな。
世の中にはあまり苦労せずになんでも成功しちゃう人というのがいる。本作のストーン博士(法学部の片手間の研究でノーベル賞)がそうだし、ジュラシックパークのマルコム博士とかもそうじゃなかったかな。
彼らちょっといけすかないわよね、と思って本読み終わってから著者の経歴読んだら自分がモデルかよ!(ハーバードの医学部で勉強するかたわら書いた小説が大ヒット、映画の制作もそこそこ成功。ドラマも大ヒット)
個人的な妬み嫉みはさておき、この手のSFが好きなのである。SFはサイエンス・フィクションの略であるけれど、この本はミステリーっぽくもある。バラバラだったパズルのピースが徐々にはまっていくような感覚は合理的で非常に心地よい。
『事件はアリゾナ州の小さな町、人口48人のピーアンドロメダ病原体ドモントで起きた。町の住人が一夜で全滅したのだ。軍の人工衛星が町の郊外に墜落した直後のことだった。』
さて困ったということで、前々からチームが作られていた各分野の学者精鋭部隊が集められ、未知のウイルスとの戦いが始まるわけである。
正直に言えば作中の各種調査の結果などはかなり斜めに読み飛ばした。それでも楽しめたのは、これがまごうことなきエンターテイメント小説だからである。
感情描写や人物の掘り下げはほとんど行われない。科学を、良く言えば有効活用、悪く言えば知的玩具として用いて作られた娯楽小説である。さんざん引っ張って盛り上げておいて、ラストは意外とあっさりというところもそれはそれでアリだ。人類の叡智がとか言いながら、そんな様をどこかでおちょくっているかのような、ウイルスや人間の生き物としての進化を楽しんでいるようでもある。
あ、ウイルスは生き物じゃないんだっけか。まあ、いいや難しいこと分からなくてもそこそこ楽しめた。しかもそれが50年前に書かれたエンタメ色の強いSFであると言うことに新鮮な驚きを感じるのである。