エリザベス女王-史上最長・最強のイギリス君主

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私の読書傾向のひとつに、強い推しについて語る人のものを好むというところがある。強い推しを持つ人たちの長期間にわたる観察や到底そこまでは思いつかないという深い考察(時によっては妄想)について話を聞くように本を読むのが好きなのだ。

 

エリザベス女王の晩年のご様子があまりに見事で、以前読んだ本が面白かった著者のこの本を読むことにした。崩御のニュースの数日前に新しい首相と会っている映像を見た。どれだけギリギリまで仕事なさっていたのかと、今までどれほどの仕事をなさってきたのかに興味が湧いた。本書はおそらく君塚先生の最大の推しであるエリザベス女王を通して近現代の英国の歴史を読むものであった。

 

25歳で女王になるのと73歳で王になるのどちらが大変なのだろう。エリザベス2世と現英国王チャールズ3世の話である。

 

意味がないと思いながらも少し想像してみたが、「25歳で大英帝国の女王になる」裸足の全力疾走で逃げ出したくなるような恐怖感である。25歳で自国、他国の海千山千いっそ百鬼夜行と言いたくなるような政治家と渡り合う?!怖っ!!

 

かといって73歳で「明日から王様やで!」と言われても、新しいこと覚えたり全世界を公務で巡るには体力にいささか(大変)に不安を感じる。大方の人にとっては隠居の歳だと思うのだが。

 

英国王政には日本の平成天皇の際行われたような生前退位の仕組みはないそうだ。もし体調不良で公務が出来なくなったときは高位の王族が仕事を代行するらしい。

 

予定通りにいかない人の生き死にに対してそれはなかなかに厳しいように思うし、74歳で王になったチャールズ3世のことを思うと、もう少し早く世代交代するという手もあったのではと思ってしまう。

 

しかし本書で記述される若き日からのエリザベス2世の仕事のもの凄さや、いざ崩御された後の英国の準備し尽くされた対応(「ロンドン橋落ちた」ってさすが007のお国ですね)をニュースで見ていると、よそ様の国のことだから口出しすることでないのは当たり前のこととして、「王が変わる」ということは効率とかそういうことではないのだという歴史に基づく説得力を強く感じる。

 

父親のジョージ6世の急逝に伴い25歳の若さで英国女王になったエリザベス2世。晩年の姿が見事だったのも当たり前である。かの人は長い長い間女王であらせられたのだ。

 

少し前にコリン・ファース目当てで見た「英国王のスピーチ」で自由な兄のわりを食って予想外に王様にさらざるを得なかった吃音癖のあるハンサムな人がエリザベス2世のお父さんジョージ6世だったことを迂闊にもこの本を読んでから気がついた。

 

任命した首相はチャーチルから先日退任をしたトラスまで。第一次、第二次世界大戦を経て数々の危機を乗り越えて英国歴代最長の70年在位。賛否や善悪を含め、多くの艱難辛苦がおありだったと思うのだがそれを感じさせず、時にキュートさすら感じる雰囲気に逆に凄みを感じるのであった。

 

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