嫌な予感。第六感。虫の知らせ。そういったものをわりと信じる方だ。その気配に気がつかないふりをして進むと、だいたいろくな目に遭わないように思う。
本書にはそういった嫌な予感が溢れている。不穏なのである。穏やかそうな顔、堅実そうな顔、真面目そうな顔をしているものが、あるときふと様子を変える。
それは日常の中に潜んでいて恐ろしさを増す。派手に凄惨なことが起きるわけではないが、気がついたら後ろにいるような怖さは、濡れやすい小雨のようにじわじわと浸みてくる。
「夜警」でダメなやつは何やってもダメなんだなと身にしみて。
「死人宿」で逃れられない闇の匂いを嗅ぎ。
「柘榴」でこういうのも親の因果が子に報いっていうのかねと思いつつ。
「万灯」でそうきましたか!と膝を打ち。
「関守」であまりの守りの固さに背筋を凍らせ。
「満願」であなたは幸せになれたのですか?と問いかけた。
ミステリーとして素晴らしく、話のバリエーションも広く飽きさせず、怖がりの怖いもの好きのワタクシはビクビクしながら、2時間くらいでつい一気読み。
山本周五郎賞受賞作、「このミステリーがすごい!」などいくつものミステリーランキングで1位になった本はやはりすごかった。
『あれはホンモノだって気がするんだ。』あの人はそう言っていたのに、信じなかったばっかりに。やはり第六感は大切にしないといけない。さもないと、、
-
宝島
骨が太い!長編!しかし消して読みづらいことはなく、純粋に楽しめる。精霊のようなものたちの形をとった語り...
2019/07/15 に投稿された
-
軌道
雲仙・普賢岳噴火災害、倉敷公害訴訟、尼崎公害訴訟、そして阪神淡路大震災の災害復興支援など、数々の災害や公害...
2020/07/13 に投稿された
-
喰うか喰われるか 私の山口組体験
タイトルほどは劇的な本ではなかった。どちらかと言うと「俺とヤクザと時々、細木数子」という感じだった。50年...
2022/06/12 に投稿された
-
春にして君を離れ
ネタバレを含みます。
こんなこと言ったら怒られてしまうかもしれないがつい思ったのである。このアガサ・クリ...
2020/10/20 に投稿された
-
業火の市
本シリーズを持って作家を引退することが発表されたドン・ウィンズロウの最新作。大好きな作家である。インターネ...
2022/06/12 に投稿された
-
小川洋子と読む 内田百閒アンソロジー
内田百閒の小説には名前を説明されないものがたくさん出てくる。ある人はそれを恋と呼ぶかもしれない。恐怖と呼ぶ...
2021/04/14 に投稿された
-
江戸前 通の歳時記
東京の下町育ちという人たちに、ずっとほのかな憧れを抱いているのだ。長く、そこに住んでいる人々は、きっぷ...
2019/04/11 に投稿された
-
バッタを倒しにアフリカへ
純粋な男だ。いわゆる無垢なという意味でなく、純度が高い。高過ぎて、いっそ少しバカに見える。
著者...
2019/04/15 に投稿された
-
ぼぎわんが、来る
盛夏である。夏といえば怪談話。というわけでタイミングよく手に入ったのでジャパニーズホラー。第22回日本...
2019/08/13 に投稿された
-
あるかしら書店
町外れのその本屋には、本にまつわる本ならなんでも置いてある。ちょっとめずらしい本。本にまつわる仕事。本にま...
2020/06/30 に投稿された