久しぶりの宮部みゆきである。三島屋変調百物語六之続。語り部がおちかから富次郎に変わっている。この手のシリーズで主役が変わるってどうよ?あんまり聞いたことないんだけどと思っていたがそこは宮部みゆきさんである。違和感を感じさせずに物語は進む。
これまでおちかは百物語を聞くことで、過去の出来事で傷ついた心を癒し戦って新たな道に踏み出す強さを手に入れた。なんならおちかの過去の方が訪れる語り部たちよりもヘビーなので語り部たちがおちかを慰めるような仕様ですらあった気がする。
たいして富次郎はどちらかと言うと苦労知らずの商家の次男坊。家業を継がない気楽さと時代物としてはあまり見ないほどの自由な環境でのびのびとしなやさに生きているのでおっかないものはおっかない。気の毒な人には他意のない同情を寄せる。この辺は物語の主要人物としては盛り上がりを出すのに不利なのではないかと思っている。本作は彼が後を継いだ第一作のようだがこの後どうなっていくだろうか。
最近も家に関する怖い本が売れているようだが、宮部みゆきの小説にはたびたび怖い家が出てくる。模倣犯のなかに出てくる家の話は本当に怖かった。このシリーズも最初の1冊には恐ろしい屋敷が出てくるものがあったし、本作にもある怨念を具現化したような屋敷が登場する。主役が変わったところで仕切り直しているように、家という人が作り人を守り人を脅かす存在を再び用いる。マンネリとはまた違う。繰り返される人の災禍の物語なのである。
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